こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】HIV患者はクローン性造血を有する割合が多い

HIV患者はクローン性造血を有する割合が有意に多いという記事。

 

Dharan, N.J., Yeh, P., Bloch, M. et al. 

HIV is associated with an increased risk of age-related clonal hematopoiesis among older adults. 

Nat Med 27, 1006–1011 (2021). https://doi.org/10.1038/s41591-021-01357-y

 

28.2% versus 16.8%, P = 0.004

修正オッズ比 2.16 (95% CI 1.34–3.48, P = 0.002)

頻度の多い遺伝子変異: DNMT3A (47.4%), TET2 (20.0%) and ASXL1 (13.3%)

 

これは感覚的にも了解可能です。クローン性造血発生の背景には炎症が関与しているのではないかという文献は他にもあり、他の炎症性疾患でもクローン性造血の有病率は高いだろうと予想されます。

 

例えば潰瘍性大腸炎の患者ではクローン性造血発生率が高いという報告があります。

Zhang CRC, Nix D, Gregory M, Ciorba MA, et al. Inflammatory cytokines promote clonal hematopoiesis with specific mutations in ulcerative colitis patients. Exp Hematol. 2019 Dec;80:36-41.e3.

 

ちなみに潰瘍性大腸炎の場合DNMT3A+やPPM1D+の割合が多く、HIVの場合と少し異なっているようでした。

 

同じ炎症性疾患でも関与する遺伝子変異はもしかしたら違うのかもしれません。

 

個人的に今回のHIVコホートは96.2%が男性と非常に患者層が偏っています。男性同性愛者がHIVリスクだからこうなってしまっているようです。もっと幅広い患者層での検証が必要かと思います。