こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

統合失調症は肺炎発症・重症化のリスクファクターか?

本日は臨床の話題です。統合失調症の重症肺炎患者を診たことをきっかけに、統合失調症は重症化のリスクとなるんだろうか?と気になり調べてみました。

 

  

1.統合失調症を有する肺炎患者はPoor outcome!

Chen YH, Lin HC, Lin HC. Poor clinical outcomes among pneumonia patients with schizophrenia. Schizophr Bull. 2011;37(5):1088‐1094.

統合失調症を有する肺炎患者は、そうでない肺炎患者と比較してICU入室リスクが1.81倍高く、急性呼吸不全リスクが1.37倍高い。

・私立病院、地域病院でより明確。

統合失調症の診断は、糖尿病、高血圧、喘息、急性呼吸器疾患の有病率上昇と関連している。

向精神薬は、呼吸器肺異常のリスクを上げる。

・ベテラン医師(49歳以上)の医師が治療した方が、有害転帰リスクが低下する。

統合失調症患者の問題点として…ヘルスケアへのアクセス低下、痛みなど症状への感受性低下、患者のコンプライアンス低下。また喫煙、アルコール依存、肥満、不適切な食事や運動不足とも関連している。

・過鎮静など不適切な医療行為によってご縁が起きるなど医原性の要因も関与している可能性がある。

統合失調症患者では、身体的疾患はひばしば過小評価される。

 

2.統合失調症患者の肺炎におけるリスクファクター:非定型抗精神病薬、低体重はリスク!

Haga T, Ito K, Sakashita K, Iguchi M, Ono M, Tatsumi K. Risk factors for pneumonia in patients with schizophrenia. Neuropsychopharmacol Rep. 2018;38(4):204‐209.

これは日本の松沢病院からの報告です!

・非定型抗精神病薬の使用、クロルプロマジン>600mg、BMI<18.kg/㎡、喫煙歴、50歳以上がリスク因子となる。

・日本における統合失調症患者は低体重が有意に多く、重要なリスク因子の1つ。

・定型抗精神病薬は肺炎発症と関連しておらず。

・過去の報告にも同様のものあり→Knol et al. は認知症患者の典型的な抗精神病薬よりも非定型抗精神病薬の投与に関連する肺炎のリスクが高いことを報告。

・抗コリン作用、H1遮断作用が肺炎発症に関与している可能性がある。

・H1遮断は、過鎮静・誤嚥を引き起こす可能性あり。

 

3.入院患者における肺炎:統合失調症の影響

Copeland LA, Mortensen EM, Zeber JE, Pugh MJ, Restrepo MI, Dalack GW. Pulmonary disease among inpatient decedents: Impact of schizophrenia. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2007;31(3):720‐726.

・退役軍人病院での研究。肺疾患で死亡した患者の特徴を解析。

・肺炎は統合失調症患者でより多く、COPDでも同様の傾向が見られた。

統合失調症患者は、喫煙指標とは関係なく、肺炎およびCOPDリスクが高い。

統合失調症患者はセルフケアやライフスタイルの問題で肺疾患リスクが高くなる。

統合失調症患者は喫煙率高く、それも関与しているが、全ての喫煙を捉えられているわけではなく注意が必要。

 

4.感想(私見)

統合失調症と肺疾患は一見関係ないように見えますが、意外な関連がありました。交絡因子の完全な除去が難しい気がしますが、多くの文献で関連が視されているので、おそらく関連があるのだと思います。抗コリン作用、H1遮断作用が肺炎発症や重症化に関与している可能性があることはたしかに腑に落ちました。