こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】インテグリン結合キナーゼは静止期CML幹細胞のTKI耐性の一因である

本日もAbstractのみではありますが、文献紹介です。

 

Cell Stem Cell. 2020 May 10;S1934-5909(20)30144-2.
Integrin-Linked Kinase Mediates Therapeutic Resistance of Quiescent CML Stem Cells to Tyrosine Kinase Inhibitors
Katharina Rothe et al.

 

Abstract
 
慢性骨髄性白血病(CML)の患者は、しばしばABL1 チロシンキナーゼ阻害薬(TKIs)による長期間の治療を要する。これはTKI耐性の白血病幹細胞(LSC)集団が持続的に存在し続けるためです。トランスクリプトームプロファイリングにより、焦点接着の主要な構成要素であるインテグリン結合キナーゼ(ILK)がTKI不応患者の細胞とLSCに高度に発現していることが分かった。ILKを遺伝的にまたは薬理学的に阻害すると、TKI不応患者の細胞生存を阻害し、TKI感作性へ変えることができた。これは保護ニッチ細胞の存在下においても同様の傾向が見られた。さらにILK阻害によって、in vivoにおいてもin vitroにおいても正常HSCにを除去することなく、TKI不応のLSCのみを患者から除去することができた。RNAシークエンシングと機能検証研究によって、高度に精製された静止期LSCにおけるミトコンドリア酸化代謝に必要なレベルを維持するためにILKが重要な役割を担っていることが示唆された。従って、こえっらの研究結果から、ILKがTKIと制式幹細胞の重要な生存メディエーターであることが分かり、幹細胞が原因で発症するがんの治療として有効である可能性を示している。