こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】CRISPR/Cas9による転写活性化因子による筋原生前駆細胞運命決定

本日は基礎のAbstract紹介です。

 

Stem Cell Reports. 2020 May 12;14(5):755-769. 
Myogenic Progenitor Cell Lineage Specification by CRISPR/Cas9-Based Transcriptional Activators
Jennifer B Kwon, et al.

Abstract

CRISPR/Cas9をベースとした転写活性因子は、内因性運命決定遺伝子を強力かつ特異的に活性化し、多能性幹細胞の直接分化を誘導する。今回我々は、PAX7転写因子の内因性活性化が、安定したエピジェネティックリモデリングをもたらし、ヒト多能性幹細胞を骨格筋構成細胞へ分化させることを提示する。PAX7 cDNAの外因性過剰発現と比較して、内因性活性化は、より増殖力の高い筋原生前駆細胞を生成することができることが分かった。これは、最終的な筋分化能を保持しながら、無血清条件下で何度継代してもPAX7発現を維持することが可能であった。PAX'の内因性活性化に由来するヒト筋原生前駆細胞を免疫不全マウスに移植すると、PAX7外因性過剰発現と比較してヒトジストロフィン+筋線維の数が大きく増えることが分かった。RNAシークエンシング分析はまた、CRISPRによって、内因性にPAX7を活性化させて作られた筋原生前駆細胞と外因性にPAX7 cDNAを過剰発現させて作られた筋原生前駆細胞のトランスクリプトーム全体の違いを明らかにした。これらの研究は、細胞運命決定をコントロールするための、CRISPR/Cas9をベースとした転写活性化因子の有効性を示している。