本日は今やっている実験の概要について解説してみたいと思います。
一部公開できないところもありますが、同じような実験をやっている方の参考になれば幸いです。
ある酵素aが欠損していることによって早期に死んでしまうa欠損症を遺伝子治療する
簡単のためにマウスを例に説明します。
a欠損症のマウスは、酵素aが分泌されないことによって生まれてすぐに死んでしまいます。
このマウスをa分泌をコードする遺伝子配列Aが欠損しています。
そこでAという配列を持ったベクターをマウス体内に運び、マウス体内で酵素aを分泌できるようにしようと試みます。
ここでベクターをまず作ります。
ベクター作りの流れ<実践>
実際に行ったベクター作りの流れを説明します。
手元にある材料は以下の通りです。
①蛍光蛋白EGFPとユビキチン(UbC)プロモーターを有する感情ベクター
②蛍光蛋白mScarletとEF-1αプロモーター
③遺伝子配列A
※遺伝子配列Aは正常マウスの臓器をもとにして、cDNA合成を行って得た。
cDNA合成の仕方はこちら↓
【実験プロトコール】cDNA合成 - こりんの基礎医学研究日記
②はベクター作製用のもので、環状ベクターの配列の一部を示すと以下のようになっています。
P2AとWPREの間に目的遺伝子(今回の場合は遺伝子配列A)を挿入すればよいようになっている。
しかし調べると遺伝子AはUbCプロモーターの下流にないと発現しないことが分かりました。
上記のように黄色矢印部分に遺伝子Aを挿入するだけでは発現しません。
そこで以下のような方法を考えました。
- ベクター①(EGFP+UbCプロモーター)から、EGFP+UbCプロモーターの部分を制限酵素でカット
- 1.でカットした配列のうちUbCプロモーター部分をPCRで増幅
- ベクター②(mScarletとEF-1αプロモーター)のうち「mScarlet~WPRE直前まで」とPCRで増幅
- 2.と3.で作ったPCR産物(DNA断片)をEGFP+UbCプロモーターカット後のベクター①に挿入
- P2Aのを制限酵素で切断し、目的遺伝子Aを挿入
完成形は以下の通り。
分かりやすく説明するのが難しかったですが、いかがだったでしょうか…。
今回は以上です。