先日の救急当直で、浮腫を伴わない頭部外傷患者(脳挫傷)にマンニトールを投与した事例がありました。
後からマンニトールは不要だったのではないか?という議論が出たため、調べてみました。
結論から言うと、「十分な臨床経験が行われていないため結論できない」という感じだと思います。しかし以下にも書いてありますが、少なくとも脳出血や頭部外傷にルーチン使用は必要なさそうです。となるとやはり脳浮腫が高度な時に使用するということになりましょうか。。。
★Brain Research
Yilmaz N, et al. Brain Res. 2007;1164:132–135.
「マンニトールは血液脳関門を通過せず、その高浸透圧(生理食塩水の3倍の浸透圧)を利用し間質・及び細胞内空間から血管内に水を引き込むことによって強力な抗浮腫効果を発揮する」
※Wikipediaによるとマンニトールは血液脳関門を緩くする作用があり、このためある程度時間が経つとマンニトール自身も血液脳関門を通って脳実質内に移動し、頭蓋内圧を亢進させる可能性があるようです。
★コクランレビュー
Wakai A, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013;2013(8):CD001049.
頭部外傷患者に、
①ペントバルビタールorマンニトールを投与→マンにトールで死亡率改善
②高張液生理食塩水orマンニトールを投与→マンニトールで死亡率増加
「急性脳浮腫の患者には劇的な効果が見られるが、長期投与によってマンニトールが血液から脳に移行し、浸透圧シフトによって頭蓋内圧を上昇させるエビデンスがある」との記載あり。
★ANNALS OF EMERGENCY MEDICINE
Gottlieb M, et al. Ann Emerg Med. 2016;67(1):83–85.
「マンニトールの有害事象として、既存の低血圧の悪化、全身Naの減少、および血液脳関門通過後の頭蓋内圧亢進がある。」
「重症頭部外傷患者にルーチンにマンニトールを使用することは推奨されない。」