先日の救急外来当直に腎機能障害のある患者さんに造影CTを施行するということがありました。慢性腎臓病の患者さんではなく感染症による一時的な腎機能障害の患者さんだったのですが、確認不足や行き違いがあり造影CT施行するに至ってしまったのです。
今のところ、その後にさらに腎機能が悪化しているということはないのですが、これを機に腎機能障害と造影剤使用に関するいくつかの文献を調べてみました。
造影剤腎症は近年その存在が疑問視されてきているようで、少なくともこれまで恐れられていたほどのリスクはないようです。
ベースラインの腎機能が正常の患者さんにはほぼリスクはなく、また慢性腎臓病の患者さんではさらなる腎機能悪化の原因となることは分かっているようですが、今回のように、例えば敗血症などによって一時的に腎機能が悪化している患者さんに対して造影剤を使用してよいかは、あまり定まってはいないようです。
今回は、比較的新しく(3年以内)publishされた造影剤腎症に関する文献を3つほど紹介します。
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Influence of contrast media on renal function and outcomes in patients with sepsis-associated acute kidney injury: a propensity-matched cohort study
(Critical Care volume 23, Article number: 249 (2019))
敗血症によるAKIの患者に造影剤は使用できるか?
・単施設 後ろ向き 傾向スコアマッチング
・339人の敗血症AKI患者
・入院24時間以内の造影剤使用vs未使用
・入院後のさらなる腎機能の悪化に有意差なし
・短期/長期死亡率、腎代替療法使用率に有意差なし
・AKIステージによらず上記結果は不変
Risk of post-contrast acute kidney injury in emergency department patients with sepsis
(Hong Kong Med J 2019 Dec;25(6):429–37)
救急外来で敗血症患者に造影CT施行すると腎障害は増加するか?
・他施設 後ろ向き 傾向スコアマッチング
・587人の救急外来受診敗血症患者
・ベースの腎機能によらず、AKI・緊急透析・および短期死亡のリスクは造影群と非造影群で有意差なし
Contrast-associated acute kidney injury in the critically ill: systematic review and Bayesian meta-analysis
(Intensive Care Medicine volume 43, pages785–794(2017))
AKIがしばしばおこる重症患者に造影剤を使用できるか?<メタアナリシス>
・10の報告を統合 4つが患者のベースラインAKIリスクを考慮しており3つが患者マッチングを行っていた
・造影剤使用によるAKI発症率増加は見られず
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これらを見ると、慢性的に腎機能障害がある患者さんはともなく、敗血症などの疾患によって一時的に腎機能が悪化している患者さんの場合は、造影剤使用のリスクはあまりないようです。
あくまで「ベースライン」の腎機能が大事なようですね。
しかし今後は注意したいものです。。。