こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】オルガノイドをもとに直腸がんの化学放射線療法反応性を予測する

本日も文献紹介。Reportの流し読みです。

 

オルガノイドというものを初めて知りましたが、面白そうです。癌の診断のため最初に内視鏡をする際に、病理とともにオルガノイド作成用の検体もとっておけば、癌の診療がよりスムーズになりそうな気がします。

 

費用面のことはあまり言及されていませんでしたが、最初は高額だったとしても、広く流布すればそれに伴って安くなるでしょうか。。。

 

 

オルガノイドとは?

オルガノイドとは?

“ミニ臓器”と呼ばれたオルガノイドは、生体内の組織または臓器に極めて似ている3D(3次元)培養システムです。この3D培養システムは、分化した組織の複雑な空間的パターンを再現でき、細胞と細胞、細胞とマトリックスとの相互作用を示すことも可能です。理想的には、生体内の分化した組織と同様の生理学的応答を有します。2D(2次元)細胞培養モデルと異なり、オルガノイドは物理的、分子的および生理学的に組織と極めて類似しています。

出典:https://www.veritastk.co.jp/sciencelibrary/learning/miniorgan-organoid.html

 

 

CLINICAL AND TRANSLATIONAL REPORT| VOLUME 26, ISSUE 1P17-26.E6, JANUARY 02, 2020
 

Patient-Derived Organoids Predict Chemoradiation Responses of Locally Advanced Rectal Cancer

Published:November 21, 2019DOI:https://doi.org/10.1016/j.stem.2019.10.010

 

Abstract

患者から得たオルガノイド(patient-derived organoids =PDOs)は、臨床において、薬剤反応性の予測に役立つことは経験的に知られていたが、癌患者に対する化学放射線療法の反応性を予測するかどうかについては解明されていなかった。今回、我々は、ネオアジュバント化学放射線療法第3相試験に登録された局所進行性直腸癌の患者からliving organoid biobankを作成した。それをもとに化学放射線療法の反応性を解析したところ、直腸癌オルガノイドが腫瘍の病態生理や遺伝的変化を高いレベルで再現していることが分かった。患者の化学放射線療法に対する反応性は、各患者のオルガノイドの反応とよく相関しており、精度は84.43%、感度は78.01%、特異性は91.97%に上った。患者由来オルガノイドが臨床において直腸がんの治療反応性を予測する重要なツールになるであろう。

 

Results & Discussion 簡単なまとめ

・第Ⅲ相臨床試験(ClinicalTrials.gov identifier NCT02605265)で新たにLARCと診断された患者から生検サンプルを得る。

・腫瘍細胞を単離し、マトリゲルに播種→オルガノイド培地で培養。

・組織学的に(免疫染色等の結果から)元の腫瘍の特徴を再現していることを確認。さらにWhole-exome sequencingを行い、遺伝子的にももと腫瘍の特徴に近いことを確認。

オルガノイドに放射線照射を行い反応性を調査(腫瘍の縮小率を解析)→実際の患者の放射線反応性と比較。

→よく相関していた。

オルガノイドを5-FuおよびCPT-11曝露させその反応性を調査(腫瘍の縮小率を解析)

→実際の患者の放射線反応性と比較。

→よく相関していた。

オルガノイドは生検鉗子で得られたごく少量の検体から培養可能。1-2週間で生成でき、成功率は70-80%程度。

・この方法を臨床におけるガイドとして利用できるかもしれない。