こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【実験プロトコール】レンチウイルスベクターの作製方法

今回も実験プロトコールです。

 

この目的は、自分の頭の整理・知識の確認の他に、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」的な、文献や教科書に載っていないけど知ってるとちょっと役立つようなことを記録しておくことです。

 

正確性には注意を払っておりますが、利用の際はご注意ください。

 

レンチウイルス関連の記事は以下の通り↓

レンチウイルスベクターの保存方法【短期保存】 - こりんの基礎医学研究日記

レンチウイルスベクターの保存方法 - こりんの基礎医学研究日記

【実験プロトコール】ウイルスタイターチェック - こりんの基礎医学研究日記

 

以下のプロトコールをもとに、ラボの先輩に教えてもらった方法です↓

https://cfm.brc.riken.jp/wp-content/uploads/Subteam_for_Manipulation_of_Cell_Fate_J/Protocols_J_files/Lentiviral%20vector%20prep.pdf

 

  1. 直径10㎝ディッシュを用意し、Poly-L-Lysineコーティングする。

    ※Poly-L-Lysine(PLL)とは?
    細胞膜上の陰イオンと培養容器表面上の陽イオンとの間の相互作用を促進する。つまりプラスチックやガラス面への細胞接着を促進する効果がある。
    →省略してもあまり実験に影響ない印象

    <やり方>
    0.01%PLLをPBSにて5倍に希釈
    →25cm2あたり1mlでディッシュに無菌的に入れる
    →10分以上放置
    →PLL溶液を吸引回収
    (回収後PLLは4℃保存し数週間程度使いまわし可能)

  2. 293T細胞5x10^6/10ml DMEMを1枚のディッシュに播く。

  3. 37℃インキュベーション 24時間
    →これで70-80%コンフルエント状態になる。

  4. 以下の配分で混合液を用意する。
    ※以下は全て10cmディッシュ1枚あたりの量。

    HBSS                                                             500μl
    パッケージングプラスミド(pCAG-HIVg)      3μg
    VSVG Revプラスミド              3μg
    SIN ベクタープラスミド          6μg
    PEI                  48μl

    ※HBSS=Hank's平衡塩溶液とは?【PBSとの違い】
    どちらももとは生理食塩水&等張液で、目的により異なる成分・化学物質が添加されている。
    PBS=リン酸緩衝液:細胞と同じ浸透圧、中性pHとなっており、細胞に害を与えず維持するために使用される。
    HBSS=Hank's平衡塩溶液PBSが緩衝液なのに対し、HBSSは平衡塩溶液である。PBSに含まれていないグルコースや2荷イオン(Ca2+, Mg2+)が含まれており、このぶん細胞障害性が低いとされる。細胞や組織の洗浄などに主に用いられる。また、Ca2+, Mg2+は細胞接着に重要な因子であるため、後の実験で細胞をバラバラにする場合などはCa2+, Mg2+フリーのHBSSが適している。

    ※PEI=ポリエチレンイミンとは?
    カチオン性ポリマー。比較的安価なトランスフェクション試薬。
    もともと、24μlと現在の半分の量で最初は教えてもらいました。しかしウイルスタイターが悪く、2倍にしてみたところ、タイターがよくなったような気がしたため、それ以降は48μlでやっております。

    ※その他レンチウイルス作成に必要なもの
    ①パッケージングプラスミド(今回はpCAG-HIVgp)
    エンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミド (VSV-G=水疱性口内炎ウイルスなど 今回もVSV-G)
    ③目的のプラスミド(SIN=Self inactivatingベクタープラスミド)

  5. 上記混合液を室温で15-20分放置。

  6. 混合液をピペットマンでぴペッティングした後に、ディッシュに均一に播く。

  7. 37℃インキュベーション 48時間

  8. ウイルス含有培養上清を50mlシリンジなどで回収。0.45μmフィルターを通して別シリンジへ。

  9. 必要に応じて保存or遠心濃縮。

 

最初にウイルスを作成したときはとてもタイターが低かったのですが、なぜか繰り返しているうちに、だんだんと安定したタイターが得られるようになってきたような気がします。ウイルスタイターについてはまたどこかで書きたいと思っています。

 

今回は以上です。