さまざまな実験に材料として使用するためのDNA、プラスミドをたくさん増やして回収するための手法として、プラスミドプレップがありますが、回収するプラスミド量によってミニプレップ、ミディプレップ、ラージプレップ(マキシプレップ)とあります。
今回は最初にラボの先輩に習ったラージプレップについて紹介します。使用する試薬の量が主に異なりますが、それ以外の流れは他のプレップとほぼ変わらないはずです。
この目的は、自分の頭の整理・知識の確認の他に、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」的な、文献や教科書に載っていないけど知ってるとちょっと役立つようなことを記録しておくことです。
正確性には注意を払っておりますが、 利用の際はご注意ください。
プロトコール内に登場するSolution1-3やPEGについては最後に組成解説あります。
- <前準備>目的のDNAをトランスフォーメーションした大腸菌をLB培地に入れ、37℃振盪培養にて増やす。
※例えばコロニーの場合は、コロニーをイエローチップや楊枝でつつき、それを10mlチューブなどに1mlLB培地+1μlアンピシリン(1000倍希釈)とともに入れ37℃で7-9時間振盪培養。以下↓は振盪培養後に混濁したLB培地(写真真ん中のチューブ)。混濁しているものを使用。両脇のチューブはあまり混濁していないので使わない。以下の混濁した溶液100-300μl(次に使用するLB培地の量に応じて適宜調整)を滅菌済み三角フラスコに100mlLB培地+100μlアンピシリン(1000倍希釈)とともに入れ、37℃で12-16時間振盪培養。この培養によって大腸菌を増やす=目的のプラスミドを増やす(培養時間を長くしても大腸菌は無限に増えるわけではなくどこかのポイントでプラトーに達する)。 - 大腸菌培養液LB培地100mlを50mlチューブ2本に分注。
- 遠心 8000g 6min
- 上清をデカントで捨て、培養液100mlをSolution1に10mlに懸濁し、よくVortexする。※ペレットのみの段階でVortexしておくと早く溶ける。
【この工程で培地を取り除き、大腸菌を1つ1つバラバラにする】 - Solution2 10mlを加え、やさしく転倒混和(このとき白く濁っていた液体が透明になり、粘性が出る)
【界面活性剤を用いて溶菌させ、プラスミドを細胞外に出す】 - Solution3 10mlを加え、やさしく転倒混和(白い塊が生じてくる)
【プラスミド以外の余計なタンパク質を塩基を用いて沈殿させる】 - 遠心 15,000g 10-20min
- 上清があまり済んでいないときは、上清を新しい50mlチューブにデカントで移し、さらに上記の遠心を追加。
- 新しい50mlチューブを用意し、傘型のろ紙をセット、ろ紙の上からピペットを用いて遠心後上清を入れ、自然滴下でデブリスを取り除く。
- イソプロパノール18mlを加え、シェイク。
- 遠心 12,000g 30min 4℃
※遠心後ペレットはほとんど見えないので、延伸する際に外側にマークをつけておくとよい。 - 上清をデカントで捨てる。
- 遠心 12,000g 5min 4℃
- 上清をP1000ピペットマンを用いて取り除く。
- 遠心 12,000g 3min 4℃
※ここまで来ると徐々に白いペレットが見えるようになってくる。 - 上清をP200ピペットマンを用いて取り除く。
- TE buffer(RNaseを含む) 1mlをチューブに加え、ペレットが液体に浸る状態になるようにチューブを傾け、37℃ 30min以上(土日を挟むなどしても可)
- <ここからPEG沈殿へ>遠心 8,000g 2min 4℃
- 上清を1.5mlチューブへ移す。
- 遠心 21,000g 10min 4℃
- 沈殿が混入しないように注意しながら上清900μlを新しい1.5mlチューブに移し、PEG solution 500μlを加え何回も転倒混和。
※このとき、透明だった液体がわずかに白濁してくる。 - 遠心 21,000g 10min 4℃
※チューブ内に白いペレットが見える。 - クリーンベンチ内で上清を捨て70%エタノール1mlを加えて軽く転倒混和。
- 遠心 21,000g 3min 4℃
- クリーンベンチ内で上清を捨て70%エタノール1mlを加えて軽く転倒混和。
- 遠心 21,000g 3min 4℃
- クリーンベンチ内で上清を捨て風乾。
- 滅菌蒸留水を100-200μl加え、4℃ over naight静置。
※急ぐ場合は常温~37℃でしばらく静置。非常に急ぐ場合はVortexも可。
★各種組成★