今回もセミナーで聞いた内容の紹介です。
CRISPR-Cas9は、
Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats CRISPR-AssociatedProteins 9
の略です。
1.「遺伝子」「DNA」「ゲノム」の違い
CRISPR-Cas9はゲノム編集システムなんですが、その前に「ゲノム」について解説します。
これは、以前にも紹介したトランスポゾンに関するブログ記事が分かりやすいです。
この中の遺伝子やゲノムについて解説している項を抜粋します。
DNAと遺伝子とゲノムで意味しているものは全部違います。
俗に言う(?)「人間の設計図」を一本の巻物に例えるとすると、ゲノムというのは「巻物全体」、遺伝子は「巻物のうち、意味のある文章の部分」(つまり意味の無い部分もあるわけです)、そしてDNAというのは「(その巻物を作っている物質である)紙(とインク)」にあたります。
分かりやすいです。
ゲノム編集とは、上記で言うと巻物の文字列を書き換えるような感じです。
2.CRISPR-Cas9のしくみ
もともとは細菌や古細菌の防御システムでした。
例えば大腸菌とかの中ウイルスが入ってきて、そのウイルスは自分のDNAを大腸菌の中に組み込もうとします。そうすると大腸菌がこのCRISPR-Cas9システム使って自分のものではないDNAを切り取るのです。(適応免疫防御機構)
CRISPR-Cas9システムは、
①ガイドRNA
②Cas9タンパク質(エンドヌクレアーゼ)
③PAM配列
の3つの要素で構成されています。
菌(ヒトでも動物でもなんでも可)のDNAの中の、「ガイドRNAと相補的な配列」でありなおかつ「PAM配列のすぐ上流に位置する配列」という2つを満たす場所(配列)にガイドRNAがCas9を連れて行き、Cas9がそこに到着すると問題のDNAをカットします。
カットされた後は、細胞の修復機構によって修復され、この修復の際に、カットされた部分に別の遺伝子を入れることもできます。
CRISPR-Cas9以前にもゲノム編集はありましたが、CRISPR-Cas9は時間やお金がこれまでの方法よりかからず、簡単にできるという点が優れていました。
病気の治療にも応用できるのではないかとされています。
自分の細胞を取り出す→ゲノム編集→また戻す
といった方法や、
必要な薬剤を全身投与し、胎内で遺伝子編集を起こさせる
といった方法です。
さまざまな細菌からCas9が単離され、その特徴が解析されているが、その中でも、現在もっともよく利用されているのがStreptococcus pyogenes(化膿連鎖球菌)由来のCas9(SpCas9)である。
3.SpCasの問題点
- オフターゲットが多い(目的でない部分に遺伝子が挿入されてしまうなど、意図しない遺伝子の変化が起きてしまう)。
- 大きすぎて(4kb)ウイルスベクターにのらず、細胞への導入効率が悪い。
- 余りに厳密にPAM配列を認識しすぎるため、自由にゲノム編集が出来ない。
今後の改良に向けた研究が待たれる。