先月Stem cell reportに出た文献の紹介です。
Magee JA, Signer RAJ.
Developmental Stage-Specific Changes in Protein Synthesis Differentially Sensitize Hematopoietic Stem Cells and Erythroid Progenitors to Impaired Ribosome Biogenesis.
Stem Cell Reports. 2021 Jan 12;16(1):20-28.
Introduction
- 造血幹細胞HSCは、タンパク質合成の正確な制御が必要となる。
- タンパク質合成速度が速すぎたり遅すぎたりすると、自己複製機能に支障が出て白血病などにつながってしまう。
- HSCは他の造血細胞と比較してタンパク質合成は少ない。
(タンパク質misfoldingによるストレスからHSCを保護するため)
→細胞周期が回ったとしても低いままとされている→胎児ではどうなの?
これを今回評価。
Result&Discussion
- ピューロマイシンを用いてタンパク質合成をチェック。
ピューロマイシンは細菌のStreptomyces alboniger由来のアミノヌクレオシド系抗生物質です。ピューロマイシン分子の一部分にアミノアシルtRNAの3’末端と類似した部分があるため、リポソーム内でのRNA翻訳を中断させる(タンパク質が未完成のままとなる)機能があり、タンパク質翻訳の解析に有用です。
出典:コスモ・バイオ株式会社ホームページ
- 過去の研究で報告されている通り、成体HSCは前駆細胞と比較して有意にタンパク質合成が低下していた。
- これに対して胎児肝HSCは他の造血細胞よりタンパク質合成が低いというわけではなかった。
- 胎児HSCは成体HSCと比較して、4.5倍高いタンパク質合成を示していた。
→タンパク質合成速度はAgeに伴って変化していくのでは?胎児期から成体期にかけて低下していくのではないか? - これに対して、赤芽球前駆細胞(CD71 + TER119 +)は成体において胎児の3.5倍のタンパク質合成。
- タンパク質合成は成体ではR3がピーク、胎児ではR2がピーク。(胎児の方は早くにピークを超える。)特にR3,4では大きな違いがある。
※胎児肝臓において赤芽球は以下のように発達していく - 次にリボソームタンパク質L24変異(Rpl24 Bst / +)を持つマウスで実験(リボソーム整合性が障害される)。胎児でも成体でもRpl24Bst / + HSCはタンパク質合成が30~50%ほど減少。
成体においてはこの影響はなかったが胎児肝においては細胞数が減少し、HSC頻度は上昇。 - 胎児でも成体でもタンパク質合成の低下はHSC機能低下につながる。どちらもHSCはリボソーム生合成障害に非常に敏感。
- Rpl24 Bst / +は変異は胎児においてのみ赤血球前駆細胞損なう。(成体では影響なし。)