こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

レモンばかりの造血幹細胞研究…それでも研究者はレモネードを作り続ける

おもしろい(?)記事を見つけたのでご紹介。

 

Kent DG.

Lemonade From Lemons: Recruiting Blood Stem Cells into Action.

Hemasphere. 2020 Jun 3;4(3):e416.

 

英語のことわざで"When life gives you lemons, make lemonade."というものがあるらしいのです。「人生が君にレモンを与えたらレモネードを作ればいい」となりますが、つまり、すっぱいもの(=あまりよくないもの、悪いもの)を与えられても砂糖を加えてレモネードにしておいしく飲めばいいという意味のようです。

 

逆境も前向きに捉えよう、悪い状況でもベストを尽くそうみたいな感じです。

 

で、上記記事の要旨を説明していきますと、以下のようになります。分かりやすくなるよう私が補足した内容も一部あります。

 

  • 科学において実験者はしばしばレモンを与えられる(≒困難な状況に直面する)。
  • 造血幹細胞移植の体外移植も長年レモンを与えられている状態だったが、昨年(2019)に、マウス造血幹細胞を1ヶ月間で200倍にも増殖させるという画期的論文が発表された。
    →これはブログでも紹介しています。

    teicoplanin.hatenablog.com

  • 造血幹細胞移植は白血病などの重要な治療であり、免疫学的観点から臍帯血は移植源として重要である。しかし量が少ない…赤ちゃんの体をまかなうには十分かもしれないが成人の体をまかなうには数が少なすぎる。→量を増やす、培養技術が重要に!
  • 少ない細胞を培養して増やすという方向の研究が多かったが、別の方向のアプローチもある。臍帯血中には「造血幹細胞候補」の細胞がたくさんいるのでそれを動員すればいいのでは?というものである。
  • Gupta et alがこれに関する論文を発表。Nov/CCN3を使うことで潜在的造血幹細胞を活性化して、移植後生着率を上げられるのでは?という内容。
    “Nov/CCN3 enhances cord blood engraftment by rapidly recruiting latent human stem cell activity”
    Gupta R, Turati V, Brian D, et al. Nov/CCN3 enhances cord blood engraftment by rapidly recruiting latent human stem cell activity. Cell Stem Cell. 2020;26:527–541.e8.
    →これは今後のさらに研究の余地があるだろう!
  • 休止状態にある臍帯血中の造血幹細胞を活性化させることに関する研究・報告はほかにもあり。
  • まとめると…臍帯血にはまだまだ移植に利用できる(が今十分に利用できていない)細胞がまだまだあるのではないか?

以上です。