こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

全身性感染と造血

調べたこと、勉強したことのメモです。

 

★LPSとは

グラム陰性菌の病原性には、細胞壁のある種の成分が関与している[1]

グラム陰性菌の膜の外葉は脂質部位が内毒素として機能する複雑なリポ多糖類 (LPS) により構成されている。 循環系に内毒素が侵入した場合、発熱、呼吸促拍、低血圧を引き起こす。エンドトキシンショックを引き起こすと死亡することがある。ヒトではLPSはサイトカイン産生、免疫系の活性化による先天性免疫反応 (en:innate immune response) を引き起こす。炎症はサイトカイン産生による通常の反応であり、宿主にとって害となり得る。

出典:Wikipedia

全身性細菌感染が起こると、LPSに誘導され、緊急造血が起き、細胞周期が回り始め、白血球増多、好中球増多が引き起こされる。これらは複数の造血因子の調節を受けて起こる。

Boettcher S, et al. Cutting edge: LPS-induced emergency myelopoiesis depends on TLR4-expressing nonhematopoietic cells. J Immunol. 2012 Jun 15;188(12):5824-8.

 

また造血幹細胞は定常状態ではその多くが休止期にあるが、Mycobacterium avium感染などの慢性感染の際には、INF-γを介して感染下のHSC増殖が誘発されると報告されている。

Baldridge MT,et al. Quiescent haematopoietic stem cells are activated by IFN-gamma in response to chronic infection. Nature. 2010 Jun 10;465(7299):793-7.

 

また別の研究では、Sepsis=敗血症とリンパ球の関係を以下のように示している。

定常状態では骨芽細胞がIL-7を放出し、これがリンパ球系共通前駆細胞CLPsに働き、B細胞やT細胞への分化を促進するが、敗血症となると、骨芽細胞が敗血症で分泌されるG-CSFに伴って無くなってしまい、CLPsからT細胞やB細胞の分化が誘発されなくなってしまい(CLPs自体の数も減少してしまい)、リンパ球が減少することによって免疫不全状態となってしまう。

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これによって、上図にもある通り骨も脆弱になってしまう。PTH(パラトルモン)を補充するとこれが一部レスキューできると筆者らは報告している。

Terashima A, et al. Sepsis-Induced Osteoblast Ablation Causes Immunodeficiency. Immunity. 2016 Jun 21;44(6):1434-43.

 

また、マラリアの慢性感染によって、やはり骨芽細胞が障害され、慢性的な骨量減少や成長遅延につながることも報告されている。

Lee MSJ, et al. Plasmodium products persist in the bone marrow and promote chronic bone loss. Sci Immunol. 2017 Jun 2;2(12):eaam8