こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

造血幹細胞と結核

調べたこと、勉強したことのメモです。

 

以前にも別の記事を書いたことがあります。

 

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【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その1~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その2~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その3~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その4~ - こりんの基礎医学研究日記

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上記の記事の内容も一部含まれます。

 

  • 造血幹細胞(HSC)は、通常休眠状態にある。これによって造血幹細胞の枯渇を防いでいる。感染などのストレス下では休眠状態から脱し、細胞周期が回り始める。
  • 2018年にKaufmannらのグループは、骨髄HSCがBacille Calmette-Guérin (BCG)や心筋細胞の細胞膜成分であるβ-Dグルカンに曝露されることによって再プログラミングが起き、IFN-IIやIL1を介して結核菌感染への耐性を獲得すると報告した。
    Kaufmann E., Sanz J., Dunn J.L., Khan N., Mendonca L.E., Pacis A., Tzelepis F., Pernet E., Dumaine A., Grenier J.C. BCG Educates Hematopoietic Stem Cells to Generate Protective Innate Immunity against Tuberculosis. Cell. 2018;172:176–190.e19.
  • 免疫機構には、細胞性免疫と液性免疫の2つがあり、結核菌に対抗しているのは主に、T細胞とマクロファージを介した細胞性免疫である。しかし液性免疫も関与している。
    https://jata.or.jp/rit/rj/harada.htm
  • ちなみに、これまで自然免疫細胞はメモリー機能を有していないと考えられてきたが、近年の研究では、自然免疫細胞も同じ病原体に感染すると耐性が強化される可能性があることが分かってきた。→trained immunity と言われる。
    これによってBCG接種を受けている国ではCOVID-19感染者数や死亡者数が少ないのでは?とされている。(BCG接種による自然免疫獲得と、そのメモリー機能がCOVID-19抵抗性にも役立っている可能性が指摘されている。)
    Netea MG, van Crevel R. BCG-induced protection: effects on innate immune memory. Semin Immunol. 2014 Dec;26(6):512-7. doi: 10.1016/j.smim.2014.09.006. Epub 2014 Oct 23. 以下Kaufmann et al., 2018
  • 単球やマクロファージは寿命が短いはずだが、なぜBCG接種によって長期的な結核耐性を獲得できるのか?→これをKaufmannらは解明。
    BCG接種→結核菌に対抗できるようHSCの性質が変化(再プログラミング)
    →HSCがマクロファージや単球を教育→結核菌に対抗
    (BCGによってHSCが直接感染しているわけではない)
    上記経路にはIFNγ経路が重要!またBCGに持続的に曝露されなくても上記効果は持続する。(Kaufmann et al., 2018)