これまでの記事の続きです。
この文献に関する記事まとめ***********
【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その1~ - こりんの基礎医学研究日記
【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その2~ - こりんの基礎医学研究日記
【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その3~ - こりんの基礎医学研究日記
【文献紹介】BCGがHSCを教育し結核菌耐性を獲得する~その4~ - こりんの基礎医学研究日記
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Kaufmann E, Sanz J, Dunn JL, et al.
BCG Educates Hematopoietic Stem Cells to Generate Protective Innate Immunity against Tuberculosis.
Cell. 2018;172(1-2):176‐190.e19.
HSC Education Is Sustainable and Does Not Require Persistent Exposure to BCG
HSCの教育は持続的でありBCGへの継続的な曝露は必要ない
・BCG接種マウスと非接種マウスの骨髄を致死量放射線照射後の別のマウスに移植してみる。移植後マウスは抗生物質で処理→BCGの影響を完全に除去→マクロファージ数とT細胞数は2種のマウスでほぼ同じ。
・この2種のマウスに結核菌を感染させてみると…BCG接種マウスで有意に肺における菌数が少なかった。→これはHSCのおかげかT細胞のおかげか?
→これを調べるためにT細胞を除去したキメラマウスを作製し同じ実験を行った。(骨髄移植時にドナー細胞群からCD3+細胞=T細胞を除去して移植する)
→これでもやはりコントロールと比較して結核菌に対する防御力はBCG接種群で有意に高い。
(防御力は上がっていたが、BCG接種マウスでLSK+細胞数が上がっていたりマクロファージ数が上がっていたりするわけではなかった)→マクロファージの能力が上がっている。
・次に、BCG接種マウスと非接種マウスの骨髄由来マクロファージに結核菌を感染させ、Rag-/-マウスに経気道的に移植した。→結核菌数はBCG接種マウス細胞移植群で有意に少なかった。
・BCGがHSCに影響を与え、抗マイコバクテリウム活性が強化されたマクロファージを産生していることを示している。
Discussion
・今回の研究で我々は、単球食細胞に病原菌に対する防御力を記憶させ維持する能力を、BCGによって教育されたHSCが付加するメカニズムを示した。
・BCG接種は、IVでなければダメ(皮下注射では効果なし)→これは皮下注射ではBCGが骨髄にアクセスできず、HSCにアプローチできなかったためと思われる。
・一度BCGによる教育を受ければ、持続的にBCGに曝露されていなくてもその機能を保持することができる。
・他の研究が示しているように、BCGが直接HSCに感染しているわけではない
・BCGは骨髄の微小環境を変えることができる可能性がある。
・一連の反応はIFN依存性遺伝子のアップレギュレーションと関連している。IFNγ経路はHSC活性化と増殖において重要な役割を示している。IFNγへの暴露がHSC応答を制御しているのは?IFNγは教育された単球/マクロファージ生成にも不可欠。
→いくつかのサイトカインは今回同定できたが多くはまだ不明。今後の研究が待たれる。
・BCGによるHSCの変化は何らかの形でMPPやマクロファージに「伝わる」ことによって結核菌感染に対する防御力が向上すると考えられる。
→これらの研究はまたヒトにおけるBCGワクチン接種戦略にも影響を与える可能性がある。
・子供のBCGワクチン接種は現在皮内注射で行われている。成人肺結核に対する予防効果は0-80%の範囲内。→効果が一貫していない。
・T細胞を標的としたワクチン接種は効果的でなかったとの報告あり。→メモリーT細胞を標的としたワクチン接種については再検討する必要がある。HSCを利用したより良いワクチン接種が可能となるかもしれない。
今回は以上です。