こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】TGF-β阻害がHSCニッチを改善することで癌性貧血改善につながる

文献紹介です。

 

TGF-βに関しては以前も記事を書きました。

teicoplanin.hatenablog.com

 

上記記事より引用。

TGF−βとは

トランスフォーミング増殖因子(Transforming growth factor=TGF)は様々な細胞の分化・増殖を制御するサイトカインである。Wikipediaによれば、骨髄・腎臓・血小板などほぼすべての細胞が産生しており、5つのサブタイプが存在するとのこと。

 

骨髄においては神経細胞であるシュワン細胞や巨核球からTGF-βが分泌されており、造血幹細胞(HSC)を休止期にとどめておく役割があるとされている。また加齢にとも名ttえ分泌量は低下するとされている。

 

今回の文献はこちら↓

 

Wang B, Wang Y, Chen H, Yao S, Lai X, Qiu Y, Cai J, Huang Y, Wei X, Guan Y, Wang T, Wang J, Xiang AP.

Inhibition of TGFβ improves hematopoietic stem cell niche and ameliorates cancer-related anemia.

Stem Cell Res Ther. 2021 Jan 18;12(1):65.

 

どうでもいいんですがWangさん(たぶん王さん)がめっちゃ多いですね。さすが(?)中国です。

 

上記文献のIntrodoctionより↓

  • 骨髄コンパートメントではTGF-βシグナル伝達経路が様々な細胞型の分化・増殖調節を担っている。
  • 骨基質の中の骨芽細胞が主にTGF-βを産生。破骨細胞にて切断され活性型となる。
    →骨形成を誘発。
  • これは諸刃の剣:活性型TGF-βは骨髄間質細胞の骨再吸収部位への遊走を促し骨形成を誘導することができる一方でTGF-β分泌はさまざまな病態の原因となる。
  • 例えばがん患者における筋力低下は癌による溶骨プロセスにおいてTGF-βが分泌されるからではないかとしている。

本文

  • マウスに肺がん細胞を注射し肺がんを作らせる。
  • 肺がんモデルマウスでは貧血が進行。実験から赤血球成熟段階の後期で赤血球生成がブロックされることが分かった。EPO増加も見られた。
  • 肺がんは赤血球のみならず造血全体に影響を及ぼすが、多能性を失う前の血球(LT-HSC, ST-HSC, MPP)は影響受けず。
  • しかし骨髄球系共通前駆細胞やリンパ球系共通前駆細胞の割合は癌マウスで減少。
  • 癌マウスでは骨吸収↑
  • また癌関連貧血マウスではSmad2,3のリン酸化レベル上昇を確認→TGFβシグナル伝達が骨髄で活性化されている。
  • TGF-β↑に伴い骨形成が促進。またCXCL12およびKITLなど造血因子の劇的な減少が見られ、ニッチが損なわれていることが示唆された。
  • SB505124(TGFβI型受容体セリン/スレオニンキナーゼの小分子阻害剤)にてTGF-βを阻害(マウスに注射)→貧血が改善した。また劣化したニッチも改善。
  • いくつかのTGF-β阻害剤は既に臨床試験
    vactosertib (phase I), galunisertib (phase II), and pirfenidone (phase III)