本日も文献紹介です。
Piras G, Montiel-Equihua C, Chan YA, et al.
Lentiviral Hematopoietic Stem Cell Gene Therapy Rescues Clinical Phenotypes in a Murine Model of Pompe Disease.
Mol Ther Methods Clin Dev. 2020;18:558-570.
Abstract
ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の活性低下または欠損によて起こるライソゾーム蓄積異常症です。筋力低下と心筋細胞の萎縮がもっとも一般的な臨床症状の1つであり、重症な乳児方において生後1年以内に心不全・呼吸不全につながる可能性がある。現在ある治療法は、制限が多々ある上に根治は困難であることから、代わりとなる治療法の確立が急務である。今回の研究で、われわれはレンチウイルスを用いてGAAを運び、造血幹細胞(HSC)・造血前駆細胞(HSPC)の遺伝子改変を行うという治療を提案する。ヒトHSPCにおけるGAA過剰発現は特に毒性はなく、移植後も幹細胞性を維持できます。ポンペ病マウスモデルを若年で治療すると、6ヵ月後にマウスの心筋や骨格筋へのグリコーゲン蓄積が著名に減少するなど表現型の改善が確認された。今回の所見は、レンチウイルスによるHSPCを解した遺伝子治療が、ポンペ病の安全かつ新しい治療となりうることを示している。
Introduction
・ポンペ病は細胞内グリコーゲンの代謝障害によって起こる稀な遺伝性疾患。
・グリコーゲンが筋肉細胞に蓄積すると、筋力低下などにつながるが、健康な固体では、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)がグリコーゲンを分解するため、蓄積はおこらない。
・しかしポンペ病患者では、このGAA機能が低下または欠損しているため、グリコーゲンが蓄積し、筋力低下、心筋細胞萎縮などが起こる。特に骨格筋・心筋が顕著に影響を受ける。
・乳児発症型と後期発症型があり、前者は全身の筋力低下として現れ、適切な介入をしないと死後1年以内に志望する。後者はより緩やかな経過で、進行性の骨格筋・呼吸筋機能障害として現れる。
・現在ある唯一の治療は、組換えヒトGAAによる酵素補充療法(ERT)だが、これでも根治は難しい。さらにこのGAAが血液脳関門を通れないことから中枢神経障害の治療はできない。
・これを補うべく、局所にGAAを運搬する方法として、アデノウイルスベクター(AAV)を使用する方法がある。
・AAVを利用した遺伝子治療は、たとえば血友病Bなどの治療に利用され、臨床試験も行われている。一方で安全性の懸念もある。
・自家造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)遺伝子治療は原発性免疫不全症や代謝障害、ヘモグロビン症の表現型の収支絵に成功し、認められた治療である。
・HSPCにおける治療遺伝子の過剰発現は、影響を受けた組織における代謝産物の毒性蓄積を提言する。
→この遺伝子治療をポンペ病に有効か検証する。
Result
まずGAA過剰発現させるためのAAVを作製
→実際に細胞にウイルスを感染させGAA活性があがることを確認する。
★CD34+HSCにおけるGAA過剰発現の認容性
HSPCにおいてGAAを過剰発現させることは、HSPC機能低下に悪影響を及ぼすか?
(GAAmCherry発現をもって形質導入を確認)
→各系統の生着能には影響なし。GAA過剰発現はHSPC機能に影響を与えない。
★In vivoでの有効性検証: 臨床表現型の改善と筋病理増の改善
・ポンペ病疾患モデルマウスGAA-/-マウスを使った移植実験を行う。
・6週のGAA-/-マウスに致死量放射線照射後、GAA遺伝子を形質導入したHSPCを移植。
→これによって血漿中GAA活性が44%増加。
・移植後6ヵ月後に遺伝子治療の表現型効果を調査した。
・心エコーと運動機能テストを実施→移植による機能回復と確認。
・心筋サイズは野生型と同レベルに改善していた。
・骨格筋と心筋におけるグリコーゲン蓄積現象あり。
・HSPCを用いた遺伝子治療によって細胞の面でも機能の面でも疾患の改善が見られる。