こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】クローン造血と心不全リスク~その2~

クローン造血に関する論文です。

 

※クローン造血に関する以前の記事

【文献紹介】クローン造血と心不全リスク~その1~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】クローン造血と動脈硬化性心血管疾患リスク - こりんの基礎医学研究日記

 

Bazeley P, Morales R, Tang WHW.

Evidence of Clonal Hematopoiesis and Risk of Heart Failure

[published online ahead of print, 2020 Aug 9]. Curr Heart Fail Rep.

 

CHIPの影響: 心不全におけるインフラマソームのターゲティング

心不全は慢性と軽度の炎症と関連している。不適切な心筋リモデリングを引き起こす。この炎症の持続は、NLRP3のインフラマソーム-IL-1βを含む炎症性サイトカインのトリガー成熟に起因する。

・NLRP3インフラマソーム活性には、まずプロIL-1β発現を増加させる開始シグナル(無菌感染による危険関連の分子パターンなど)が必要。次に完全インフラマソームアセンブリーを促進する活性化シグナルが必要。

・心筋炎のような急性の状況では、40%以下のEF、NYHAⅢ-Ⅳの心筋組織の心不全患者でより多くのインフラマソームを含む白血球が発見された。

インフラマソーム阻害は心不全治療の有効かも?

・ヒト心房組織ではin vitro研究により炎症性サイトカインIL-18の阻害により収縮機能が改善されることが明らかになった。カスパーゼ1の阻害によりIL-1βからIL-18への切断を減少させると、収縮機能減少が抑えられることが分かった。

心不全におけるIL-1β阻害は有効。心筋リモデリングが減少。

・クローン造血は、上記の炎症治療が心筋障害改善につながるというのとは別の道筋を示している。

白血病への変化と心血管疾患発生は、慢性炎症とクローン造血・クローン進化を惹起する能力によって関連付けられている。

 

Conclusion

・高齢者に一定割合ではっせするCHIPは冠動脈疾患発生率を高めることから、心血管分野で関心が高まっている。

・クローン造血と炎症を増加させるサイトカイン変化と同様に、TET2, DNMT3AおよびJAK2などの一般的な変異の役割が実証されている。

・これらの研究の大部分はCHIPと虚血性心疾患との間にどのような関連があるかを探している。

・CHIPで見られる炎症の増加は心血管転帰に悪影響を与える可能性がある。

・CHIPと心不全がどのように関連しているかはまだ不明確、今後の研究が必要。