本日は文献をまとめたレビュー的内容です。
脾膿瘍の症例を診たので、それについて文献を調べてみました。短めにまとめてみます。
********************************************
・脾膿瘍は剖検例で0.0049~0.7%に見られる稀な疾患。(1)
・うち血行感染によるものが73.4~80%と多い→脾膿瘍発見した際には原発感染巣の検索が必要と考えられる。(1)
・致死率6%と比較的高い。(1)
・原因としては、以下が主に挙げられている。(2)
①他感染巣からの血行性転移
②脾周囲からの炎症の波及
③医原性
④外傷
⑤その他(悪性腫瘍,膠原病,免疫不全状態など)
・発熱のみが症状となることも多い。(2)
・塞栓症や膿瘍をしばしば併発する感染性心内膜炎による脾膿瘍発生率は2%ほどとされる。(3)
・通常、脾臓摘出や経皮的ドレナージが必要とされる。(2)(4)
・脾臓摘出適応として、以下が推奨されている。
難治性敗血症、破裂の危険性が高い場合、大きさが2cm 以上ある場合 (2)
・しかし6cm大の脾膿瘍を保存的に加療しえたとの報告もあり。(5)
→著者らは、保存的加療の選択には注意を要するとしているものの、高齢者など手術が困難な症例で保存的加療が選択肢となり得ることを示唆している。
・脾臓摘出はOPSI(Overwhelming Postsplenectomy Infection 脾臓摘出後重症感染症)のリスクとなり、その意味でも保存的加療の選択は考慮されるべきである。(2)
・かつては、脾臓が血流に富む臓器で出血リスクが高いため穿刺が好まれなかったが、エコーガイド下穿刺などの発達により安全に手技が行えるようになり、よりメジャーな方法となっている。(2)
・藤田らの報告によると脾膿瘍24例の報告のうち、死亡は1例のみと良好な予後であると報告している。(2)
********************************************
参考文献:
(1)三宅聡一郎ら. 感染性心内膜炎による脾梗塞が原因と考えられた脾膿瘍の1例. 日臨外会誌. 2011; 72: 1853-1857.
(2) 藤田博崇ら. 感染性心内膜炎に合併した脾膿瘍に対し 経皮的ドレナージが有効であった1例. 日臨外会誌. 2009; 70(11): 3433-3437.
(3)Alnasser SA, et al. Successful Conservative Management of a Large Splenic Abscess Secondary to Infective Endocarditis. Ann Thorac Surg. 2019;107(4):e235–e237.
(4) Wang CC, et al. Splenic infarction and abscess complicating infective endocarditis. Am J Emerg Med. 2009;27(8):.
(5) Taimur S, et al. Gemella morbillorum endocarditis in a patient with a bicuspid aortic valve. Hellenic J Cardiol. 2010;51(2):183–186.