少しブログ投稿の日数が空いてしまいました。
昨日はミニ・シンポジウムがあったのですが、そこで取り上げられていた内容に関する文献の紹介です。
ATP Turnover and Glucose Dependency in Hematopoietic Stem/Progenitor Cells Are Increased by Proliferation and Differentiation
Abstract
造血幹細胞HSCは骨髄ニッチの中に静止期で存在しており、グルコース依存的ななATP産生に比較的頼っている。一方で、造血前駆細胞HPCなどの分化細胞は、主に酸化的リン酸化回路を介したATP産生に依存している。しかしながら、細胞分化と細胞周期の状態がどのように栄養状態やHSCやHPCのATP産生に影響を与えているかは明らかでない。我々は新たに開発した培養システムを用い、HSCの生存はグルコースに強く依存していること、一方で静止期HSCはある一定期間グルコースを必要とすることなく生存することが可能であることを示す。また、HPCの中でもgranulocyte/monocyte progenitors (GMPs)は、その増殖において特にグルコース依存的である行きたい細胞内でのATP濃度をモニタリングすることによって、我々は、HSC内でも短期間であればグルコースがなくてもATPレベルを維持することを実証した。これはおそらく代謝の可塑性を実現するためと考えられる。さらにHSCはATP回転率が低いのに対し、GMPは高いATP回転率を示し、グルコースによる効率的ATP産生をより必要としていることが分かった。これらの所見は、ATP回転率と栄養要件は、細胞周期と分化状態に応じ、HSCとHPC間で異なることを示している。
内容まとめ
※一部セミナーでの講義内容も含む。
・HSCはミトコンドリアの代謝活性を抑制→代わりに解糖系優位
・しかしストレス環境下ではこの状況は変化する 移植・感染・出血など →代謝には可塑性あり
・低酸素やアミノ酸など外環境の変化にともなって内環境(細胞分裂周期など)が変化する
・HSCは生存・維持は時と場合によってグルコース依存的。
→静止条件下(低サイトカイン状態=Steady state)ではグルコース非依存的に生存可能。
・静止期HSCはATP消費が少ない。
・HPCの生存は全てのサイトカイン濃度(低サイトカイン状態=Steady stateでも高サイトカイン状態=炎症状態)でもその生存はグルコース依存的。
・特にGMPなど分化したHSCでATP産生が高かった。(分化細胞においては解糖によるATP産生が増加すると過去の報告にあり。)
⇒造血幹細胞の代謝様式は固定したものではなく、細胞周期や文化段階によって変化するものである。
今回は以上です。