こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

後方循環系脳梗塞への血管内治療は有効か?

今日は臨床系の文献紹介です。簡単にいきます。

 

Endovascular Therapy for Stroke Due to Basilar-Artery Occlusion

May 20, 2021
N Engl J Med 2021; 384:1910-1920
DOI: 10.1056/NEJMoa2030297

 

なぜこの文献が目に留まったかについて、脳卒中に対する血管内治療の歴史の解説も軽く交えつつ説明していきます。

 

前置きはいいからすぐに結果知りたい方はこちら↓

 

私が前病院の脳卒中科をローテーションしていた2017年に日本の脳卒中治療ガイドラインの内容が改訂され(「追補2017」というものが発表された)、内頚動脈または中大脳動脈M1閉塞に対する発症6時間以内の血管内治療がGrade Aに格上げされたのです。

 

つまり、循環器領域と比べて10年も遅れているとされていた脳血管へのカテーテル治療の効果が認められつつあり、立ち位置がどんどん増している時期だったわけです。

 

これに乗って(?)2018年5月に私はヨーロッパの脳卒中学会でカテーテル治療に関する発表を行いました。

 

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日本のガイドラインでは発症6時間以内が適応だけれどもそれを過ぎていてもカテーテル治療は効果的なのでは?という内容です。院内レビューの結果、発症8-24時間で血管内治療実施した患者の中で、退院3か月後のmRSが入院時mRSよりも1以上改善した患者が62%という結果でした。個人的には十分高い数値だと思います。

※mRS=modified Rankin Scale

脳卒中発症後の生活自立度の尺度のこと。脳卒中患者の予後評価の指標としてよく用いられる。

 

つまり、脳卒中の血管内治療にはいろいろ思い入れがあったわけです。

 

で、当時の適応をもう一度見てみますと、

内頚動脈または中大脳動脈M1閉塞に対する発症6時間以内の血管内治療がGrade Aに格上げ」です。

 

つまり前方循環系だけが適応だったのです。脳底動脈の閉塞のように後方循環系の脳梗塞に対しては適応ではなかったのです。まだデータが不十分だったわけです。これは今後は適応になるのかな…などと当時なんとなく考えていました。

 

そこで出てきたのが今回の文献です。

 

Endovascular Therapy for Stroke Due to Basilar-Artery Occlusion

300人の患者を対象とした他施設open label RCT:発症6時間以内の脳底動脈閉塞による脳梗塞に対して、血管内治療群と標準治療群1:1に分けて3か月後のmRSや合併症率を評価したというものです。

 

その結果…

3か月後にmRSが改善

血管内治療群154例中68 例(44.2%)vs 薬物治療群146 例中55 例(37.7%

症候性頭蓋内出血

血管内治療群4.5% vs 薬物治療群0.7%

90 日時点での死亡率

血管内治療群38.3% vs 薬物治療群43.2%

 

以上、3項目すべて95%信頼区間は1をまたいでおり、有意差は出ませんでした。合併症率も一見大きく違いがあるように見えますが有意差はつかなかったようです。

 

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※個人的意見ですが、仮に症候性頭蓋内出血発生率に有意差がついたとしてもあまり大きな問題ではないように思います。

 脳卒中科ローテート時に、カテーテル治療をきっかけとして脳出血が起きてしまう方は確かに一定割合いたのですが、脳出血といってもごく微量なものが多く、出血に対して特別な治療が必要な症例や、出血によって大きく予後が悪化してしまった症例はありませんでした。

 事実、今回の試験でも、頭蓋内出血率発生率は血管内治療群で高いものの、90日後の死亡率やmRSはむしろ(有意ではないものの)血管内治療群の方がよいという結果です。「症候性」頭蓋内出血ですし、もちろん患者さんにとっては軽視すべきではない問題ではありますが、長い目で見た時の予後には大きな影響を与えないのでは?と個人的には思うので、「治療効果が同等で合併症率が高いなら血管内治療は必要ない!」と結論付けるのは早計すぎるように思います。

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考察では、信頼区間の幅が広く、「この試験の結果から血管内治療の相当な利益は否定されない」としておりさらなる大規模試験が必要だとしています。

 

これは私も同意します。サンプルサイズ計算はきちんとされているのですが、300人はやはりちょっと少ないかなという印象を受けますし、それは95%信頼区間の幅の広さにも表れています。文献を読めばいろいろlimitatioがあることも分かります。

 

思い入れ深い血管内治療にぜひ頑張ってほしい!という私情(?)まみれなわけですが、いつか後方循環系脳梗塞の治療としても有効性が認められる日が来てほしいです。

 

実際の文献はこちら↓

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2030297

分散分析

講義で聞いたことのメモです。若干言葉の羅列だけになってしまっていますが…

 

分散分析

分散分析は、層別解析や回帰モデルを目的として、連続量を評価するときに主に用いられる。

 

まず、基本用語を確認。その後、前半は実験・研究計画全般に関すること。分散分析に関することは後半。

 

反応:臨床研究で言うエンドポイント、評価項目のこと。

因子:反応の変動に影響しうる因子。回帰分析では説明変数のこと。例としては、温度や薬剤など。

水準:群と同じ。「治療群」「プラセボ群」の群。グループのこと。

 

制御因子:臨床研究であれば、介入・治療、暴露などのこと。

表示因子:臨床研究の場合、施設間や地域間で結果に差が出ることがある。この施設や地域にあたるのが表示因子。

ブロック因子:補助因子。医学研究では予後因子。または交絡因子。

 

要因実験

いくつかの因子を検証したいとき、すべての組み合わせで実験を行うこと。

臨床試験において最も有名な要因実験は、Physicians' Health Studyである。

アスピリンとβカロテンすべての組み合わせ(4通り)で検証している。

目的 抗血小板薬低用量aspirinが心血管死を減少させるか,またβ-カロチンが癌の発生を減少させるかを検討。
コメント aspirinは心筋梗塞(MI)のリスクを減らした。脳卒中と全心血管死についての結論は出なかった。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,2×2 factorial。
期間 追跡期間は平均60.2か月(45.8~77.0か月)。
対象患者 22071例。40~84歳。健常な男性医者。
治療法 aspirin群11037例,プラセボ群11034例。aspirin+β-カロチン,aspirin+プラセボプラセボ+β-カロチン,プラセボプラセボのいずれか。aspirin 325mg,β-カロチン50mgを隔日投与。
結果 MIリスクはaspirin群で44%低下(プラセボ群の439.7件/10万人・年)に対し254.8件。相対リスク0.56, p<0.00001)。脳卒中リスクはaspirin群でわずかに上昇(有意差なし。相対リスク2.14, 95%信頼区間0.96-4.77, p=0.06)。aspirin群の潰瘍の相対リスクは1.22(aspirin群169例,プラセボ群138例,p=0.08)。

出典:循環器トライアルデータベース

※上記試験は、アスピリンとβカロテンでエンドポイントが異なるという少し特殊な事例。

上記は2x2だが、例えば因子Aにパターン、因子Bに4パターンあったら12通りすべてで実験する必要があるということ。

 

反復とランダム化、局所管理

実験や検証の際には、同じ条件で何度も検証が行われる必要があり(反復)、因子として取り上げていない要因の影響を受けるのを防ぐためにランダム化が推奨される。また、実験場全体のランダム化や均一化が困難なときは、実験場を小ブロックに区切り局所的に均一性を保つ必要がある。例えば、A施設とB施設で治療Cと治療Dどちらが優れているか検証するとき、A施設では治療C、B施設では治療Dという風には振り分けられない(このようなデザインもあるが)。A施設内でC群とD群にワンダムに分け、B施設内でC群とD群にワンダムに分けて検証する。これが局所管理の例である。

 

解析の実際(例)

ある動物実験の例

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これは2元配置分散分析か?

実際はデータのとり方によって解析法が異なっている。

例えばA,Bともに制御因子(薬剤)であったら?1回目の実験と別日に2回目の実験を新たに行っていたら?(この場合2回目の方が手技に熟達しよいデータが出る場合がある)上記はすべて同じ1匹の実験動物に行われていたら?(この場合クロスオーバー実験となる)…

→すべて解析法が異なる。実験データのとり方によって解析法が異なることに注意。

 

分散分析

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上記のような実験を例に考えてみる。

このとき、ばらつきは群間でほぼ一様(等分散)でデータに外れ値がない場合を前提とする。

水準間で反応に差があるか? → つまり1日目から4日目までのHb値の平均に差があるかを検証する。

 

このようなときF検定が用いられる。F分布には2種類ある。

ここからはデータ分析入門「分散分析の基礎」

https://logics-of-blue.com/anova-foundation/

も参考にしつつ記述。ことわりが特にないときは、引用部分は上記サイトから持ってきたもの。

F検定には2種類あり。

分散分析には大きく分けて一元配置と多元配置(二元配置)といわれる分析方法があります.

一元配置

例えば,3カ国の男性の平均身長の違いは国籍に関係あるのかといった場合,国籍がグループを識別する(唯一の)要素になります.このように,グループを識別する要素が1つのものを一元配置のデータと呼び,これのデータを用いた分散分析を一元配置の分散分析といいます.

 

アメリ フランス  日 本
 ○○cm  ○○cm  ○○cm

二元配置

先のデータに対し,「父親の身長が高いか高くないか」という要素を加えて,各人を2つの要素(国籍と父親の身長)で識別できるようになっているものを二元配置のデータといいます.これを用いた分散分析を二元配置の分散分析といいます.

 

  アメリ フランス  日 本
父親の身長高い  ○○cm  ○○cm  ○○cm
父親の身長低い  ○○cm  ○○cm  ○○cm

この分析では例のデータを考えた場合,分析の目的は,

  1. 国籍によって平均身長に違いはあるのか
  2. 父親の身長の高低によって平均身長に違いはあるのか
  3. 2つの要素による相乗効果はあるのか

という3つになります.とくに3つめのような「交互作用」を分析することが二元配置の分散分析の主要な目的になります.

多元配置

より多くのグループ分けの要素からなる分散分析です.詳しくは統計のテキストを見て下さい.

ちなみに2因子のF検定はt検定と全く同じである。

上記ヘモグロビンの例の場合、4群比較を行う。

 

分散分析の検定統計量はF比と呼ばれる。

今回は「食べ物をA,B,Cに変えた時、家畜の体重の平均値に差があるか」を調べる目的で分散分析を使うことにします。因子は餌の種類であり、水準は餌A、餌B、餌Cの3つです。
なお、ここでの分散分析は一元配置分散分析と呼ばれます。

分散分析の目的は、水準ごとに平均値に差があるかどうかを判断することでした。検定統計量であるF比を計算して、この値が大きいかどうかを判断することで、平均値に差があるかどうかを判断する流れです。

分散分析は、名前の通り分散が大きな役割を果たします。F比は以下のように計算されます。

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定義通りですと理解しにくいかもしれません。F比のイメージは以下のようなところになります。

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効果というのは、今回の事例では餌の違い(異なる水準の間にある違い)となります。餌が変わることによって体重が大きく変わった(異なる水準の間で体重が大きく変わった)ならば「効果が大きい」と言えます。

 

上記の式で、「誤差の大きさ」で「効果の大きさ」を割るのは、誤差があることを加味してもなお効果があるとみなせるかを検証している。

 

ヘモグロビンの例でF値を計算してみると…F値=15.79 p<0.0001

となったとする。

F検定で有意差があるとは?→群のどこかに違いがあるという意味。

2群の場合は明らかだが、3群以上の時はどこに差があるのかわからない。

このようなときには用量反応性の検討が必要。

(動物実験の場合は、使用動物ごとの個体差は表示因子とみなし、分析モデルに加えるとよい。)

医師はがんスクリーニングに関する統計を正しく理解しているか? 

講義で習ったことのメモ。

 

 

医師はがんスクリーニングに関する統計を正しく理解しているか? 

~PETによるがんスクリーニングは生存期間を延長させるか?~

 

 

Q. がん患者を集めた後ろ向きコホート研究でスクリーニングとしてPETを実施した群と実施しなかった群に分けて検証したところ、PET実施群では非実施群よりもがんによる死亡率が低かった。PETによるがんスクリーニングはがん死亡率を低下させるか?


A. No, これはoverdiagnosis biasによるものの可能性がある。以下の図の通り、スクリーニング群では見かけ上の死亡率が低くなるため、後ろ向きコホート研究で上記のように結論付けるのは難しい。

 

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Q. 同様の後ろ向きコホート研究にてPET実施群と非実施群の生存期間を検証したところ、PET群の方が生存期間が長いという結果となった。PETによるがんスクリーニングは生存期間を延長させるか?


A. No, これはleadtime biasによるもののの可能性がある。以下の図を見てわかるように、スクリーニング群では見かけ上の生存期間が長くなるため、後ろ向きコホート研究で上記のように結論付けるのは難しい。

 

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Q. 今度はRCTにてPET実施群と非実施群の生存期間を比較したところ、実施群の方が生存期間が延長するという結果であった。


A. Yes, RCTであればlead time biasの問題をクリアできる(全患者が同時期=同じ時点で評価を受けているためである)。つまり、RCTでPET群のほうが生存期間が長いならば信頼できる結果である。

 

徳田安春氏によると上記3つの質問に正しく答えられる医師は30-50%程度。

Table 1

Understanding among Japanese physicians about evidence that cancer screening saves life (N = 940)

  Item 1 Item 2 Item 3
Proves 376 40.0% 451 48.0% 466 49.6%
Does not prove 374 39.8% 286 30.4% 234 24.9%
Does not know 190 20.2% 203 21.6% 240 25.5%

Item 1: More cancers are detected in screened populations than in unscreened populations (correct answer: does not prove).

Item 2: Screen‐detected cancers have better 5‐year survival rates than cancers detected because of symptoms (correct answer: does not prove).

Item 3: Mortality rates are lower among screened persons than unscreened persons in a randomized trial (correct answer: proves).

Soshi M, Mizuta T, Tokuda Y. Subclinical cancer diagnosis fallacy. J Gen Fam Med. 2018;19(3):70-71. Published 2018 Mar 30. doi:10.1002/jgf2.168

 

上記内容は以下の文献内容を基に作成。図も以下の文献から引用。

 

Wegwarth O, Schwartz LM, Woloshin S, Gaissmaier W, Gigerenzer G.

Do physicians understand cancer screening statistics? A national survey of primary care physicians in the United States.

Ann Intern Med. 2012 Mar 6;156(5):340-9.

 

ちなみに症状のない人に対するスクリーニング検査は推奨されていない。

 

Clinical Effectiveness Research 比較効果研究

講義で習ったことのメモ。

 

Clinical Effectiveness Research 比較効果研究

米国国立アカデミー医学研究所(Institute of Medicine;IOM)は、CERを以下のように定義している。

 

CER とは,疾病の状態を予防,診断,治療,監視する,あるいは医療の提供を改善する種々の方法の利害を比較するエビデンスを生成し,合成することである.CER の目的は,消費者,臨床家,購入者,及び政策立案者への情報提供による意思決定(informed decisions)を支援し,それにより個人と集団のヘル
スケアをいずれも改善することにある.
出典:鎌江 伊三夫「医薬経済学的手法による医療技術評価を考える<2>─EBM, VBM, HTA:概念を整理する─」

 

CERという概念は、米国のオバマ政権による医療政策重視の流れのなかで登場。
米国は世界で最も医療費が高額であり(しかも5000万人弱の無保険者を抱えている)、平均寿命が米国より長いはずの日本や他の先進国を圧倒的にしのぐほどである。医療費の高騰を抑えつつ医療の質を担保したい米国は臨床研究に答えを求めた。その結果、2009年に計上された景気悪化支援策予算のうち11億ドルを治療・診断・各種医療サービスの比較効果研究(comparative effectiveness research:CER)に割り当てた。

 

あいまいな概念で分かりづらいが、「費用対」効果比較研究と考えると多少わかりやすい。
※米国は費用の概念を含めないとしているがヨーロッパでは含めるとしているなど見解が微妙に分かれている。
 
前向き研究も後ろ向き研究も可能。
 
 
CERの例↓
 
Soeteman DI, Stout NK, Ozanne EM, Greenberg C, Hassett MJ, Schrag D, Punglia RS.
Modeling the effectiveness of initial management strategies for ductal carcinoma in situ.
J Natl Cancer Inst. 2013 Jun 5;105(11):774-81. doi: 10.1093/jnci/djt096. Epub 2013 May 3. PMID: 23644480; PMCID: PMC3776282.
 
非浸潤性乳がんの治療法のメリット・デメリットをシミュレーションを用いて検証するという内容。新薬vsプラセボといったような形式の臨床試験はには該当しない。

菌種特異的な増殖抑制薬の開発

セミナーのメモ。

菌種特異的な増殖抑制薬の開発に関してです。

 

世界的に薬剤耐性菌の広がりが問題となっている。

  • 既存の抗生剤は最近の生存に必須の生合成経路を標的としている。
  • 濃度依存性の作用を示す。
  • 菌種特異的なものではない。
  • 低濃度の使用が耐性菌発生につながりやすい。
    *********************************
  • 耐性の獲得が予想以上に早く、新規薬剤の開発も限界に達しつつあり、耐性菌が大きく問題となっている。
  • 英国O’Neillレポートによると2013年現在薬剤耐性菌による死亡者は70万人程度であり、2050年には1000万人ほどになると予想されている。
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  • 医療現場での不適切使用も問題だが、畜産分野での乱用など他の要因もある。
    Ex. 養豚業で豚を死亡させないために抗生剤は多量に使用されている。

主に病気の予防や治療に使用される抗生物質は、一部の公衆衛生擁護者の間で、家畜類への抗生物質の大量使用がより薬物耐性菌につながる可能性があると懸念されています。薬物耐性菌は、家畜はもちろん、食肉製品を食べた人にも影響を及ぼす可能性があります。

出典:革新的な給餌と豚舎の技術により、カーギルは責任を持って生産された豚肉製品の数々をお客様に提供しています。

 

アップルパイ以上に米国的なものといえば、最近では抗生物質で育てられた動物の肉ぐらいになった。米国で販売される抗生物質の80パーセントが、人間の患者ではなく、食肉となる豚や牛、七面鳥、ニワトリに使われているのだから。

出典:「抗生物質まみれ」の食肉産業は今後どうなる──業界の「闇」に迫った科学ジャーナリストが語った

  • 新規抗生剤は開発が年々減っている。
    慢性疾患に比べて使用期間が短く、製造コストが高騰しておりビジネスとして成立しにくい。
    また、創薬標的やシーズが枯渇してきている。(つまり開発しつくされている)

    余談だが抗ウイルス薬の開発は難しい。ウイルスは単体では生きられずかならず宿主に寄生して増殖する。人体組織に影響を与えずウイルスだけターゲットとするのは難しいため→このためウイルスではワクチンが重要となる。

  • 抗菌剤に代わる薬剤は?…白血球抵抗因子、内毒素、組織破壊酵素などを標的として薬剤が考えられている。
    利点:選択圧が低く胎生化が生じにくい、内在性細菌叢に影響なし
    欠点:広範囲スペクトラムは望めない。

  • 化膿性レンサ球菌
    国内40万人以上/年が感染。軽症咽頭炎~壊死性筋膜炎など重篤感染症まで臨床像はさまざま。治療法は早期に抗生剤大量投与するのみ…他の治療法は?
  • は生物の生存増殖に不可欠。化膿性レンサ球菌ははShrという分子を介して鉄を取り込む。Shr欠損細菌は血液中での増殖が抑制され、細菌数が減少する。
    →鉄(ヘム)取り込みを標的とした新規抗生剤が作れるかもしれない。

神経幹細胞(Neural Stem Cell)とは

興味を持ったので少し調べてみました。

 

以前の記事でも示した通り、幹細胞にはいくつかの種類がある。

胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞が主なもの。

 

出典:藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座ホームページ

 

 造血幹細胞も神経幹細胞も体幹細胞の一部。

 

神経幹細胞による神経新生は、脳の主に2つの場所(側脳室脳室下帯海馬歯状回顆粒下帯)で行われる。ここに神経幹細胞ニッチが存在するのである。

 

以前は哺乳類の成体では、神経新生は行われないと考えられていたが、その後の研究でニューロンの新生は生涯続くことが明らかになった。

 

また、脳から取り出してin vitroで培養することが可能である。造血幹細胞はニッチ(微小環境)の制御を強く受けておりこれは難しい。(Conti, L., et al. (2005) PLoS Biol., 3, e283.)

 

また、造血幹細胞が加齢に伴って数が増えていく(機能は低下していく)のに対して、神経幹細胞は、その割合、自己複製能、ミトコンドリア活性、神経新生ともに加齢に伴って減少していく。 (Kruger et al., 2002, Enwere et al., 2004, Maslov et al., 2004, Molofsky et al., 2006)

 

しかし一方で高齢者の神経幹細胞も運動によってある程度再活性化できるなどの報告もある。(Lugert et al., 2010)

 

老化は、神経幹細胞はじめ幹細胞に悪影響を及ぼすが、幹細胞が老化するメカニズムや理由は明らかになっていない。すべての幹細胞は非対称分裂を介して自己複製し、複製にともなうDNA損傷から守られるコントロールされた静止状態になったり離脱したりすることができるよう。(Schultz and Sinclair, 2016, Rojas-Vázquez S, et al. 2021;15:666881.)

 

医学テータ統計解析に関するあれこれ Vo.3

大学院講義で学んだことのメモ。

 

医学研究デザインで大事なことは

 

1.ばらつきを小さくする!=Precisionをあげる

   …サンプルサイズ増やす、測定精度を上げる。

2.バイアスを小さくする!=Accuracyをあげる

   …サンプルサイズ増してもダメ。デザインの工夫が必要だが統計法でも制御可。

 

過去記事でも紹介した通り、誤差的ばらつきを小さくする(=Precisionをあげる)にはサンプルサイズを大きくすることが重要だが、サンプルサイズを大きくしたからと言ってバイアスは減らない(Accuracy)は上がらない。

 

ここで言うばらつきとバイアスは以下のようなイメージ↓

 

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出典:eigopedia「『Accuracy』と『precision」』に違いはありますか?」 

 

交絡バイアスの制御・調整の方法

1.デザイン

  • 限定:「リンパ節転移がない症例のみ集めて解析」など。しかし交絡因子が多いと対象者が少なくなってしまう。
  • マッチング:「治療群も対照群もリンパ節転移有り率が秘匿しくするようにして解析」など。これも交絡因子が多いと対象者が少なくなってしまう。
  • ランダム化未知の交絡因子を排除できる→これは上記2つの方法では困難。このためランダム化が交絡バイアス排除の最強の方法。

2.統計解析

  • 層別解析:例えば「リンパ節転移有り群」と「リンパ節転移無し群」である薬の治療効果を判定する。
  • 回帰モデル:「慢性心不全のなりやすさ=A×B血圧×C年齢」といったようなモデルを作り調整する。このモデルが臨床的に妥当なのか?の評価はとても難しい。モデルを過信してはダメ。
  • 傾向スコア法:傾向スコア法に関してはまた別記事で解説予定。