こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

神経幹細胞(Neural Stem Cell)とは

興味を持ったので少し調べてみました。

 

以前の記事でも示した通り、幹細胞にはいくつかの種類がある。

胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、iPS細胞が主なもの。

 

出典:藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座ホームページ

 

 造血幹細胞も神経幹細胞も体幹細胞の一部。

 

神経幹細胞による神経新生は、脳の主に2つの場所(側脳室脳室下帯海馬歯状回顆粒下帯)で行われる。ここに神経幹細胞ニッチが存在するのである。

 

以前は哺乳類の成体では、神経新生は行われないと考えられていたが、その後の研究でニューロンの新生は生涯続くことが明らかになった。

 

また、脳から取り出してin vitroで培養することが可能である。造血幹細胞はニッチ(微小環境)の制御を強く受けておりこれは難しい。(Conti, L., et al. (2005) PLoS Biol., 3, e283.)

 

また、造血幹細胞が加齢に伴って数が増えていく(機能は低下していく)のに対して、神経幹細胞は、その割合、自己複製能、ミトコンドリア活性、神経新生ともに加齢に伴って減少していく。 (Kruger et al., 2002, Enwere et al., 2004, Maslov et al., 2004, Molofsky et al., 2006)

 

しかし一方で高齢者の神経幹細胞も運動によってある程度再活性化できるなどの報告もある。(Lugert et al., 2010)

 

老化は、神経幹細胞はじめ幹細胞に悪影響を及ぼすが、幹細胞が老化するメカニズムや理由は明らかになっていない。すべての幹細胞は非対称分裂を介して自己複製し、複製にともなうDNA損傷から守られるコントロールされた静止状態になったり離脱したりすることができるよう。(Schultz and Sinclair, 2016, Rojas-Vázquez S, et al. 2021;15:666881.)