こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

菌種特異的な増殖抑制薬の開発

セミナーのメモ。

菌種特異的な増殖抑制薬の開発に関してです。

 

世界的に薬剤耐性菌の広がりが問題となっている。

  • 既存の抗生剤は最近の生存に必須の生合成経路を標的としている。
  • 濃度依存性の作用を示す。
  • 菌種特異的なものではない。
  • 低濃度の使用が耐性菌発生につながりやすい。
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  • 耐性の獲得が予想以上に早く、新規薬剤の開発も限界に達しつつあり、耐性菌が大きく問題となっている。
  • 英国O’Neillレポートによると2013年現在薬剤耐性菌による死亡者は70万人程度であり、2050年には1000万人ほどになると予想されている。
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  • 医療現場での不適切使用も問題だが、畜産分野での乱用など他の要因もある。
    Ex. 養豚業で豚を死亡させないために抗生剤は多量に使用されている。

主に病気の予防や治療に使用される抗生物質は、一部の公衆衛生擁護者の間で、家畜類への抗生物質の大量使用がより薬物耐性菌につながる可能性があると懸念されています。薬物耐性菌は、家畜はもちろん、食肉製品を食べた人にも影響を及ぼす可能性があります。

出典:革新的な給餌と豚舎の技術により、カーギルは責任を持って生産された豚肉製品の数々をお客様に提供しています。

 

アップルパイ以上に米国的なものといえば、最近では抗生物質で育てられた動物の肉ぐらいになった。米国で販売される抗生物質の80パーセントが、人間の患者ではなく、食肉となる豚や牛、七面鳥、ニワトリに使われているのだから。

出典:「抗生物質まみれ」の食肉産業は今後どうなる──業界の「闇」に迫った科学ジャーナリストが語った

  • 新規抗生剤は開発が年々減っている。
    慢性疾患に比べて使用期間が短く、製造コストが高騰しておりビジネスとして成立しにくい。
    また、創薬標的やシーズが枯渇してきている。(つまり開発しつくされている)

    余談だが抗ウイルス薬の開発は難しい。ウイルスは単体では生きられずかならず宿主に寄生して増殖する。人体組織に影響を与えずウイルスだけターゲットとするのは難しいため→このためウイルスではワクチンが重要となる。

  • 抗菌剤に代わる薬剤は?…白血球抵抗因子、内毒素、組織破壊酵素などを標的として薬剤が考えられている。
    利点:選択圧が低く胎生化が生じにくい、内在性細菌叢に影響なし
    欠点:広範囲スペクトラムは望めない。

  • 化膿性レンサ球菌
    国内40万人以上/年が感染。軽症咽頭炎~壊死性筋膜炎など重篤感染症まで臨床像はさまざま。治療法は早期に抗生剤大量投与するのみ…他の治療法は?
  • は生物の生存増殖に不可欠。化膿性レンサ球菌ははShrという分子を介して鉄を取り込む。Shr欠損細菌は血液中での増殖が抑制され、細菌数が減少する。
    →鉄(ヘム)取り込みを標的とした新規抗生剤が作れるかもしれない。