こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】感染によりDNMT3変異クローン造血が促進される

最近はやりのClonal hematopoiesisに関する文献紹介です。今回は簡単にいきます。

 

Hormaechea-Agulla D, et al.

Chronic infection drives Dnmt3a-loss-of-function clonal hematopoiesis via IFNγ signaling.

Cell Stem Cell. 2021 Mar 16:S1934-5909(21)00108-9.

 

  • 加齢に伴うクローン造血は悪性腫瘍、心血管疾患などすべての原因による死亡の危険因子。
    ※ブログ作者注:「クローン造血とは」
    血液検査値が正常であっても、他の血液細胞とは異なる遺伝子を持った(遺伝子に傷がついた)血球が増加してしまう状態。
  • クローン造血の原因となる遺伝子変異はいくつか報告されており、DNMT3Aの体細胞変異もまたその1つだが、変異がおきてからクローン造血が起きるまでの間に数十年経過する場合があり、遺伝子変異だけでなく環境要因がクローン造血発生に関与していると考えられている。
  • 今回の研究で筆者らは、感染症がDNMT3A変異造血幹細胞(HSC)に関与しているのではないか?と考え、それを検証。
  • Dnmt3a -/-HSCとワイルドタイプ(WT)HSCをマウスに移植。変異HSCと通常HSCどちらも持ったマウスを作成。
  • このマウスに組換えIFNγ注射を行い、感染を再現→Dnmt3a -/- HSCが増加。
  • これが感染によるアポトーシスの低下によるものであることも分かった。
  • 感染症による炎症性シグナル伝達が、Dnmt3a変異体クローン造血を促進する。