勉強したことのメモ。出たばかりの論文です。HSCに関して。
Hu, M., Lu, Y., Wang, S. et al.
CD63 acts as a functional marker in maintaining hematopoietic stem cell quiescence through supporting TGFβ signaling in mice.
Cell Death Differ (2021). https://doi.org/10.1038/s41418-021-00848-2.
- 造血幹細胞(HSC)の細胞運命は様々な因子で決定づけられているが、HSCも不均一な集団であり、この細胞運命決定の根本的なメカニズムは分かっていない。
- 今回、マウスHSCの新しい機能マーカーとしてテトラスパニンCD63を同定した。
- HSCの中にもCD63を発現している集団としていない集団があり、CD63発現が高いHSC(CD63hi)は、CD63発現が陰性または低いHSC(CD63- / lo)よりも静止状態にあるものが多く、自己複製および骨髄分化能が強化されていた。
- CD63 KOマウスではHSC数が減少し、静止状態及び長期再増殖能が障害されていた。
- さらなる研究でCD63がTGFβシグナル伝達経路活性を維持する役割を担っており、これを通してHSC静止を調節する上で重要な役割を果たすことをつきときめた。
- scRNA-seq dataに基づいた細胞クラスタリングを用いて、新たな細胞表面マーカーを抽出→CD63とCD81が同定され、CD81の方は既にその役割が議論されていたため、今回はCD63に注目した。
- CD63発現は、MPPなど分化した細胞よりLT-HSCに多い。またLSK分画内でもCD63+分画の方がLT-HSCは濃縮率高い。
- CD63+LT-HSCの方がG0期にある細胞が多くBrdUも高い→LSK分画内でもCD63+細胞は静止期にある細胞が多い。
- 移植実験をしてみるとCD63+HSCの方が再構築能が高い。
- RNAシークエンスをしてみると
CD63hiLT-HSC…静止・HSC signatureに関する遺伝子が濃縮
CD63low/-HSC…HSC増殖、細胞周期、DNA重複遺伝子セット関連遺伝子が濃縮 - CD63を用いて強力な自己複製能をもつHSCを識別できる。
- CD63をKOするとHSCの数が減少(MPPはあまり減少しない)
- CD63をKOするとG0期にある細胞が減少し、 BrdU取り込みが増加やHSCの枯渇が弥泊なるなど、静止期にあるHSCが減少する徴候が見られた。
- CD63 KO HSCを移植してみると長期再構築能が低下。
- CD63 KOによってTGFβシグナル伝達が阻害される。
※TGFβシグナル伝達はHSC静止期維持に必須。
★NA-seqデータ分析を見るとCD63の発現がHSCのTGFβシグナル伝達活性と相関。
★CD63 KOによってSmad2/3リン酸化はHSCで有意に減少。
★CD63 KOにてTGFβシグナル伝達の直接標的遺伝子であるP57レベルが減少。
★HSCでTGFβシグナル伝達を維持するためにCD63が必要である可能性を示唆。
※Smad2/3はTGF-βシグナル伝達系における主要な転写因子。様々な補因子と結合することにより、多種多様な遺伝子発現の制御する。