こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

軽症新型コロナウイルス感染症後の後遺症は若年者多く6か月後もみられる

南江堂から送られてくるNEJM Journal Watch COVID-19 Contents Newsの中から目に付いた記事をピックアップしてみます。

 

Blomberg, B., Mohn, K.GI., Brokstad, K.A. et al. 

Long COVID in a prospective cohort of home-isolated patients. 

Nat Med (2021). https://doi.org/10.1038/s41591-021-01433-3

 

上記文献は、新型コロナウイルス感染者の中でも軽症者の後遺症について調べています。

 

このノルウェーで行われた前向き観察研究によると、軽症者は実に全症例の82%を占めていたとのことです。(312人が軽症に相当)

 

感染後6カ月の時点で、61%の患者が持続的な症状を訴えており、主なものは以下の通り。

倦怠感(30%)、味覚かつ/または嗅覚障害(27%)、集中力低下(19%)、記憶障害(18%)、呼吸困難(15%)

これらの後遺症は主に16-30歳の若い患者に多く見られたとしています。

症状の有無は医療者による面接でチェックしたとのことです。

(軽症者そのものが若年者が多いというのもあります。年齢中央値は46歳。)

 

この記事を書いたNEJM Journal Watch記者は若年者で後遺症が長く続くというのは若年者にワクチンを打つ動機の1つになるのではないか、としています。

 

私見ですが、上記文献の報告には若干疑問を感じます。というのも主観的な症状ばかりだからです。

 

例えば、「腹痛」のような「痛み」の症状であったり「1日4回以上の下痢」「月3回以上の38度以上の発熱」などのように客観的に病的だと評価できる症状がほぼ含まれていません。

(「痛い」というのも主観的な症状ではありますが、「倦怠感」や「集中力低下」などよりは多少は客観性と再現性のある症状です。)

 

倦怠感とかどうやって客観的に異常だ、病的だと判断できるのでしょう?

本人が「なんかだるい気がする」と言えばもうコロナ後遺症になってしまうのでしょうか。

 

以前COVID-19ワクチンの記事で、ワクチン接種後副反応として倦怠感59% 頭痛52%などの症状がみられるものの、しかしプラセボ群でも倦怠感は23% 頭痛は24%にみられると紹介しました。単純に考えると倦怠感・頭痛の半分近くは気のせいということになります。

 

実際そんな単純ではないのはわかりますし、上記の文献も、ある程度これまでに発表されている文献や他の感染症での調査と互換性・一貫性がある部分もありますから、全部が全部気のせいでしょうと結論付けるのはさすがに乱暴すぎますが、実際にCOVID-19感染と因果関係のある症状、真の後遺症はもう少し少ないのではないかと勝手に思っています。