こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】性ステロイドホルモンブロックでリンパ球造血能が回復

Khong DM, Dudakov JA, Hammett MV, et al.

Enhanced hematopoietic stem cell function mediates immune regeneration following sex steroid blockade.

Stem Cell Reports. 2015 Mar 10;4(3):445-58.

  • 加齢に伴い免疫能が低下し、様々な疾患にかかりやすくなるが、これは骨髄と胸腺内におけるリンパ球系造血が低下してしまうことに起因する。
  • また初期造血幹細胞(HSC)の内因性変化もこれに関与していると考えられている。
    ・DNA修復能低下
    ・DNAメチル化パターンの変化
    代謝異常
    ・骨髄系造血への偏り(9か月ごろには見られ始める)
    →これらがすべて加齢に伴うHSC機能の変化につながっている。
  • 過去の研究でステロイドも加齢に伴ったリンパ球造血減少にいくらか関与していることが示唆されている。
    ※補足:ステロイドとは?
    精巣・卵巣から分泌されるステロイドホルモンの総称。エストロゲンプロゲステロン、アンドロゲンなどのこと。
  • 筆者らは過去にsex steroid ablation(SSA)=性ホルモンブロックによって老化し免疫能が低下した骨髄と胸腺を若返らせ、末梢血T細胞とB細胞機能を像増強し、移植後免疫能回復を促進することを以前に発表している。
    →今回はこのメカニズムを詳細に調査。

 

  • 実験の結果、SSAによってHSCと造血前駆細胞(HSPC)の数が増加することがわかった。リンパ球刺激性前駆細胞(LMPP)も数が増加(通常は加齢に伴って減少)。
  • またSSAによって移植後再増殖能がアップする。→これはhoming力Upによるものではない。
  • SSAによって自己複製能がアップ
  • SSAによってLT-HSCのリンパ球系分化能がアップ
  • 遺伝子解析してみるとSSAの後に骨髄分化に関連する遺伝子のダウンレギュレーションとリンパ球形成に関与する遺伝子のアップレギュレーションがみられた。
  • SSAによって骨髄ニッチが変化することによって加齢で低下したリンパ球系造血を復活させる。