読んだ文献のメモ。
Poscablo DM, Worthington AK, Smith-Berdan S, Forsberg EC.
Megakaryocyte progenitor cell function is enhanced upon aging despite the functional decline of aged hematopoietic stem cells.
Stem Cell Reports. 2021 Jun 8;16(6):1598-1613.
- 高齢者では免疫応答能力が低下し、心血管障害や骨髄性疾患の増加が報告されている。
- これら老化による機能障害は、造血幹細胞HSCの老化による機能低下と並行して起こる。老化した細胞は宿主へのホーミングと生着能力が劣る。
- しかしこれまでのHSC機能評価は骨髄球、Bリンパ球、Tリンパ球の生着率によって主に議論されてきた。つまり白血球の再構成能力が中心で、赤血球細胞や血小板に関してはあまり注目されてこなかった。
- 筆者らは、赤血球と血小板(Plt)賛成の定量的測定と評価を実施した。
→巨核球形成に関する加齢の影響に関して予期せぬ発見があった。
【論文の前半は高齢HSCの再構成能低下、高齢ニッチが若齢HSCの再構成能を損なうなどといった過去の研究でも報告されている内容が多いためResultの後半を紹介】
- 高齢マウスHSCに観察された最もsevereな変化は巨核球形成の変化。
- 血小板も巨核球前駆細胞も高齢マウスでは数も頻度も増加。
- 若齢巨核球前駆細胞と高齢巨核球前駆細胞をin vitroで3日間培養
→高齢の方が2.5倍多く増殖…高齢巨核球前駆細胞の方が増殖能力が優れているかも? - 今度は若齢巨核球前駆細胞と高齢巨核球前駆細胞を若齢レシピエントマウスに移植してみた。→高齢巨核球前駆細胞の方が高い血小板再構築能を示した。
若齢巨核球前駆細胞は血小板うち7.4%を再構築
高齢巨核球前駆細胞は血小板のうち34%を再構築 - 高齢巨核球前駆細胞の移植は赤血球細胞や顆粒球細胞のキメリズム上昇にも寄与。血小板とともに移植後数週間は上昇し、その後徐々に減少した。
→巨核球前駆細胞は老化によって、増殖能と再構築能が上昇する。 - 高齢巨核球前駆細胞と若齢巨核球前駆細胞の違いをGene ontologyで調査。
→高齢の方で増殖に関する遺伝子が高度に濃縮。その他、細胞接着、炎症、ミトコンドリア調節に関するカテゴリーも高齢と若齢で違いあり。
※加齢に伴う血小板機能変化にミトコンドリア活性が関与しているというこれまでの報告と一致。 - RNA-seqの結果も機能分析で観察された挙動を裏付けている。
- 高齢者において巨核球前駆細胞や血小板が増加しているのは、高齢者で血栓症が多いことと関連している可能性がある。