文献紹介。AbstractとBMSCの簡単な解説のみ。
Kenswil KJG, Pisterzi P, Sánchez-Duffhues G, et al.
Endothelium-derived stromal cells contribute to hematopoietic bone marrow niche formation.
Cell Stem Cell. 2021 Apr 1;28(4):653-670.e11.
Abstract
- 骨髄間質細胞BMSCは組織の維持と再生において極めて重要な枠割を果たす。
- 今回の論文では、ヒト胎児と再生骨髄細胞中の、内皮細胞マーカーと間質細胞マーカーの両方を発現しているLNGFR+細胞を見出した。
- この内皮細胞の中の特定の細胞群は、内皮間葉移行(EndoMT)に一致する転写因子再構築を示し、移植時に造血ニッチを再構築するための多能性間葉系細胞を作ることができる。
- マウスにおけるSingle-cell transcriptomicsと系統追跡を行うと、EndoMTが骨前駆細胞や造血ニッチプール形成に寄与していることがわかった。
- IL-33はEndoMT細胞群で過剰発現しており、ST2受容体シグナル伝達を通じてこの変換プロセスを促進する。
- これらの結果は、これまで明らかになっていなかった、BMSCがどのようにできるかという過程を明らかにするのに役立つ。
Introduction(一部ブログ筆者補足もあり)
骨髄間質細胞(BMSC)とは?
骨髄に存在する非血球系の間葉系細胞の総称.主に血管周囲に存在する周皮細胞や網状細胞などを指し,場合によっては骨芽細胞を含む場合もある.造血系幹細胞のニッチを構成し,間葉系幹細胞を含むと考えられる.
出典:実験医学online
他の文献によれば、BMSCにはいくつかの全く異なる生物学的性質があると法億されている。これは、BMSCとされる細胞がそれぞれ多種の機能を有しているというわけではなく、もともとBMSCが骨髄液を24時間ほど培養した際に、培養皿に接着している細胞のことを指し、上記にもある通り、様々な細胞の総称と考えてよい。(その中の一部が間葉系幹細胞)
(黒田敏「骨髄間質細胞移植による脊髄損傷の再生」Spinal Surgery 29(2)147-152.2015)
上記の引用文献にもあるように脊髄損傷後の再生など、神経細胞再生の材料として注目を集めている。
(BMSC移植によって、障害された中枢神経機能が改善したとの動物実験の報告が多数ある。)
本論文中のBMSCに関する記述をいくつか抜粋する。
- 組織の恒常性を維持し、損傷後組織の再生を促進する効果がある。
- 骨格形成に重要な役割を果たし、造血幹細胞ニッチの構成要素である。
- (必要なら患者本人から湯甥に採取でき免疫反応も少ないことから倫理的課題が少なく)培養増殖及び特定の細胞に分化させる技術は近年注目を浴びている。
- しかしその起源については明らかになっていない。
- BMSCプールサイズは発達制限されるのか、外傷による損傷などで細胞が失われたときそは調節されるのか?などといったこともまだ明らかになっていない。