こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】EGFRシグナル伝達経路阻害でG-CSFによるHSC末梢血動員が増加

造血幹細胞HSC関連の論文の紹介。

 

Ryan, M., Nattamai, K., Xing, E. et al. 

Pharmacological inhibition of EGFR signaling enhances G-CSF–induced hematopoietic stem cell mobilization. 

Nat Med 16, 1141–1146 (2010). https://doi.org/10.1038/nm.2217

 

  • 造血幹細胞移植のために、サイトカイン顆粒球コロニー刺激因子(GCS-F)を患者やドナーに投与し、骨髄中にしかいない造血幹細胞を末梢血に動員し、末梢血採血にてそれを得るという方法が現在広く行われている。
  • しかしドナーの10%で十分量の幹細胞を動員できないなど、十分に効率的な方法とは言えない。→より優れた方法の開発が期待される。
  • EGFRは細胞接着と遊走の両方で重要な役割を果たしていることが知られており、これのHSC動員への関与を筆者らは調査。
  • 造血前駆細胞(HSPC)中のEGFRの量は、G-CSFによって動員される細胞の能力と逆相関→EGFRシグナル伝達はG-CSFの作用を抑制する方向に作用しているのではないか?と筆者らは考えた。
  • EGFR阻害剤エルロチニブを投与すると、G-CSFによるHSC動員が増加した。
  • エルロチニブはすでに臨床において使用されている薬剤であり(新しい薬剤ではない)、すぐに臨床応用できるのでは?とNatureハイライト記者はコメント。