南江堂から送られてくるメールマガジンに掲載されていたCOVID-19関連記事のなかで目に付いたものをpick upしていきます。
COVID-19流行で子供の幸福度の減少を保護者らが感じている
Caregiver Perceptions of Children’s Psychological Well-being During the COVID-19 Pandemic
Tali Raviv, et al.
JAMA Netw Open. 2021;4(4):e2111103.
- 公立学校の生徒32,217人の保護者を対象として調査。
- 幼稚園から高3までの子を持つ保護者に匿名でメールを使って調査。
- 保護者がCOVID-19による学校閉鎖前後の子供の心理的健康状態の変化を評価。
- 怒りや不安などネガティブ感情を子供が抱えていると答える割合が学校閉鎖によって有意に増加し、ポジティブな感情を抱いていると答える割合が有意に減少。
- 非ラテン系家族の方が黒人やラテン系家族より懸念を訴える割合が有意に高い。
- 収入が高い家庭の方が懸念を訴える割合が有意に高い。
【私見】
上記結果は当たり前といえば当たり前なのですが、収入が高い家庭の方が懸念の訴えが多いのは若干意外でした。なんとなく逆のような気がしますよね。人種による違いも少し面白いと思いました。ラテン系の人の方が楽観的なのでしょうか??単一民族の日本人にはあまりイメージできませんが、(どこまで事実かわかりませんが)聞く話によると黒人の方は受けらる医療も限定されたりするみたいですし、そういった意味での不安も大きそうな気がしますがそうではないみたいです。
個人的には子供自身ではなく保護者が子供精神状態を評価しているところにちょっとバイアスが生じそうな気がしました。子供の精神状態を親が正しく評価できているかというと必ずしもそうでないように思います。どちらかというと子供を心配する気持ちから過大評価傾向になってしまう(実際より子供の心理状況を重めに評価してしまう)のでは…と感じました。
本文中では都市部の家庭のみを対象としていることなどがLimitationとして挙げられていました。
重症COVID-19治療にはデキサメタゾンよりメチルプレドニゾロン?
Is Methylprednisolone Better than Dexamethasone for Severe COVID-19?
Daniel D. et al.
BMC Infect Dis 2021 Apr 10
- ステロイドの中でもデキサメタゾンは重度COVID-19肺炎の死亡率を下げることがすでに分かっているが、デキサメタゾンよりも肺移行性が高いメチルプレドニゾロンがこれよりも患者の予後を改善させるかをRCTで調査。
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イランにてSARS-CoV-2感染者86人の成人(SpO2:92%以下)をデキサメタゾン群とメチルプレドニゾロン群に分け、二重盲検でその効果を調査。
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メチルプレドニゾロン群の患者では人工呼吸器使用率が有意に低く、入院期間が有意に短く、死亡率が有意に低い。
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NEJM記者は上記の違いが肺移行性の違いなのかメチルプレドニゾロンの容量が多いことによるものなのか不明だが検討の余地はあるとコメント。
【私見】
私が勤めている病院のコロナ病棟はデキサメタゾンを使用しています。(たぶん世界的に現在はそれがスタンダードです。)
調べてみるとこの発端はイギリス国営医療システムが6000例以上という圧倒的症例数を確保し実施した研究でデキサメタゾン6mgの有効性を証明し、ステロイドを使用しないが倫理的に許されない状況となってしまい、他の臨床試験が軒並み中止されてしまい、他のステロイドとの比較検討が不十分な状態になってしまったらしいです。
以下の日経メディカル記事にそのようなことが書かれていました。
今回の論文の結果を見ると症例数は少ないもののかなり期待できそうな気がします。もっと検討が進むといいです。
また日経メディカルの記事で初めて知りましたが、他の病院はけっこうステロイドパルスをやっているようで少し驚きました。というのも自分の病院ではパルスまではやったことがなかったからです。個人的にはパルスはあまり致死的な副作用がないように認識している(短期的副作用は高血糖やせん妄くらいでしょうか?血栓形成や潰瘍形成は自分は経験ありません。もちろんステロイド投与が長期化していけば他の副作用もたくさん出てきますが)ので、どこかのタイミングでトライしてみたいです。