こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

バイアグラを造血幹細胞移植に応用

表題の通り。流し読みとそのメモみたいな感じです。バイアグラが造血肝細胞移植に役立つかも…という面白い論文です。

 

Smith-Berdan S, Bercasio A, Rajendiran S, Forsberg EC. Viagra Enables Efficient, Single-Day Hematopoietic Stem Cell Mobilization.

Stem Cell Reports. 2019 Nov 12;13(5):787-792.

 

白血病などのいくつかの血液疾患では、造血肝細胞移植が唯一の根治法。造血肝細胞移植のためには、ドナーから造血幹細胞をとってくる必要があるが、その際手法はしばしば問題となる。

 

骨髄に多くの造血幹細胞がいるので、全市麻酔の上、骨盤の骨から骨髄を取り出すという処置が日本では一般的に行われているが、入院・麻酔などの負担が大きい。

 

そこで、普段ほぼ骨髄にしかいない造血幹細胞を投薬などによって末梢血中に動員し、普通の採血や献血などのような感じで造血幹細胞を採取できないか様々な方法が試みられている。

 

例えば、G-CSFを連続的に投与すると、骨髄からHSCが末梢血に出てくるとされており、これが用いられるときもあるが、費用が高いなどの問題も残っている。(HSCの多くは定常状態では休止期にあり、G-CSFはこの休止期にあるHSCを活性化する働きがある。)

 

今回の論文はこのHSC動員のためにバイアグラが使えるのではないか?という内容。

 

シルデナフィル(バイアグラ)をマウスに投与

バイアグラ単体では有意なHSC動員は確認できなかったが、バイアグラとAMD3100を併用すると血管透過性・血管漏出が亢進し、末梢血へのHSC動員が有意に増加する。

筆者らの実験ではG-CSF投与時とほぼ同等の動員効果(有意な差なし)だったと報告している。

 

また、このようにして得たHSCをマウスに移植してみると、幹細胞機能を保持し、長期債増殖が可能なHSCが増加していることが分かった。

 

バイアグラをもしヒトを対象に用いるとして費用を計算してみると、約2ドルであり、3800ドルかかるG-CSFより明らかに安価にすむことが分かる。