こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】加齢ショウジョウバエの精子産生減少のメカニズム~生殖細胞系列幹細胞の分裂減少~

Cheng, J., Türkel, N., Hemati, N. et al. 

Centrosome misorientation reduces stem cell division during ageing. 

Nature 456, 599–604 (2008).

 

  • 体幹細胞の機能低下は組織の老化に寄与すると考えられるが、根本的メカニズムは不明のまま。
  • 筆者らはキイロショウジョウバエ生殖細胞系列幹細胞(GSC)に注目し、老化によっておこる変化を調査した。
  • キイロショウジョウバエのオスのGSCは、常に非対称分裂を起こす
    これは、以下のように中心体(中心体の核が中心小体)が細胞の両極に移動し、紡錘体を形成し、染色体を引っ張ることによっておこる。

細胞分裂1

出典: 受験のミカタ「体細胞分裂とは?」

  • しかし筆者らの調査の結果、上記のように中心体が両極に配置されない(誤った配置)の GSCが齢にともない増加することを突き止めた。
  • この誤った配置のGSCは分裂頻度が低い
  • 加齢とともに誤った中心体配置のGSCが増加→分裂が減少→精子産生減少
    につながっていると考えられる。
  • 筆者らの研究によるとこの誤った中心体配置のGSCの少なくとも一部は精原細胞の脱分化によって生じている。
  • 過去の研究では、GSC数は、計算されたGSC半減期から予想されるほど急速には減少せず、GSCの喪失を補償するメカニズムが存在することが示唆されている→脱分化が幹細胞を補う1つの方法なのかも?