こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】ヒトiPS細胞からのミクログリア誘導

Stem cell reportsのMost readを軽く紹介してみます。

 

Chen SW, Hung YS, Fuh JL, Chen NJ, Chu YS, Chen SC, Fann MJ, Wong YH.

Efficient conversion of human induced pluripotent stem cells into microglia by defined transcription factors.

Stem Cell Reports. 2021 Mar 26:S2213-6711(21)00140-5.

 

Abstract

中枢神経の免疫細胞であるミクログリアは脳の病態生理において重要な役割を果たしている。我々は、SPI1とCEBPAの2つを強制発現させることによってヒト由来iPS細胞から10日間でミクログリアを誘導する新しいアプローチ法を今回提示する。誘導細胞にはミクログリアマーカーが高レベルに発現しており、高い純度のミクログリア細胞であることがRT-qPCRや免疫染色、FACS解析にて証明された。全トランスクリプトーム解析でもヒトの胎児/成体ミクログリアと似通っていることが分かった。さらにこれらのミクログリアは、炎症応答やADP / ATP誘発性の遊走や食作用など、本来のミクログリアに近い生理学的機能を呈した。またヒトiPS細胞由来ニューロンと共培養すると、損傷したニューロンのもとへミクログリアが遊走する反応もみられた。我々の研究は、ヒトiPS細胞から機能的ミクログリアを誘導するプロトコール確立に寄与し、これらが関与した疾患モデルの作成や薬品開発に役立つであろう。