ES/iPS細胞からの無血清単層造血血球分化システム文献紹介です。少し前のものですが、日本発の論文であることもあり読んでみました。
Niwa A, et al.
A novel serum-free monolayer culture for orderly hematopoietic differentiation of human pluripotent cells via mesodermal progenitors.
PLoS One. 2011;6(7):e22261.
Introduction
- ES細胞、iPS細胞から血球細胞を分化させる方法は、疾患研究のために重要。このためにはin vivo造血を確実に模倣できる方法を確立する必要がある。
- ES/iPS細胞から血球を分化させる方法はこれまで主に2つあった。
①単層動物由来間質細胞共培養
②3次元胚様体(EB)形成システム
※ブログ筆者補足
胚様体とは…
ES細胞やiPS細胞からいろいろな細胞に分化する途中の段階。ES細胞やiPS細胞を一定期間浮遊培養させることによって生じる細胞の塊のこと。胚体外胚葉と中・内胚葉に分化する二重構造。例えば心筋細胞に分化させたい場合、心筋細胞は中胚葉から分化するため、ES細胞やiPS細胞から中胚葉成分の多い胚様体に分化させる、といった方法を取る。
- ある程度系統を制限することができる。
①はヒトiPS細胞からの誘導率が低い、②はEB内の3次元構造把握が困難であることからやはり大幅な効率化が難しい。 - 上記の問題を解決するため、筆者らは新たな方法を報告。
→ES/iPS細胞からの無血清単層造血血球分化システム
Results
動物由来間質細胞を含まない無血清単層培養によるES/iPS細胞からの機能的造血幹細胞の段階的生成
- 3段階で生成
①PS細胞への初期分化
未分化多能性細胞からPS様細胞への分化。この段階ではBMP4が重要な役割を果たすことが分かった。
BMP4存在下で4日間培養
→未分化マーカー発現が減少し、中胚葉マーカー・造血前駆細胞マーカーが上昇
→多能性幹細胞から側板中胚葉へ分化開始。
(ES細胞でもiPS細胞でもほぼ同様の結果が得られた。)
②造血中胚葉への誘導
筆者らの先行研究のデータをもとに、BMP4をVEGFとSCFに置き換えた。さらに2日間(4-6日目)培養。
→mRNA発現パターンは中胚葉細胞が有意であることを示した。FACS解析でも側板中胚葉マーカー陽性/沿軸中胚葉マーカー陰性などの所見を確認。
→造血中胚葉前駆細胞出現を示唆。
③造血系統へのコミットメント
培地を造血サイトカインを含むものに変更。(骨髄誘導カクテル:SCF・TPO・IL3・FLT-3リガンド・G-CSF 赤血球誘導カクテル:SCF・TPO・IL3・FP6・EPO)
→10-12日目に造血クラスターが出現、その数日後に浮遊血球が出現し、その後増加。
→iPS細胞でもES細胞でも50日目までに血球産生が確認。
●骨髄カクテルで培養した血球では30日目にミエロペルオキシダーゼ染色陽性に。
●赤血球カクテルではHb+赤血球細胞とCD41+巨核球などを産生。
●ES細胞とiPS細胞で結果に違いはなし。
ES/iPS細胞由来造血細胞は通常のin vivo血液細胞と同様の機能
- 培養して生成した甲虫気宇と赤血球の機能を検証。
- 好中球は、走化性物質fMLP刺激によって遊走活性を示した。またそれは菌類が分泌する代謝産物サイトカラシンB投与にて阻害された。※ブログ筆者補足:通常サイトカラシンBは好中球凝集を促すが、ある一定以上の濃度でその効果はなくなる。
- 赤血球は通常の赤血球とほぼ同様の酸素解離曲線を示した。
ヒトES/iPS細胞由来の是九細胞からのクローン性造血発生
- ヒトの造血においては造血幹細胞、造血前駆細胞が重要な役割果たしている。→これに相当する細胞をES/iPS細胞から作ることはできないか?
- 筆者らの培養系で未分化な造血細胞は生存できる?→25日までにCD34+CD45+造血細胞は維持されている。
- 筆者らの培養系で多能性造血幹細胞または前駆細胞を一定期間培養できる。
KDR+CD34+CD45-バイポテンシャル血液血管共通前駆細胞の同定