調べる機会があったのでそのメモです。
Igf2bp2遺伝子とは
RNA結合たんぱく質を産生する遺伝子。ほかの遺伝子の翻訳を調節する。
癌胎児遺伝子(oncofetal gene)の1つで、骨髄増殖性疾患などにも頻繁にその変異がみられるHigh Mobility Group AT-hook 2(HMGA2)の下流に存在している。
HMGA2 は,それ自体は転写活性を持たないが,転写因子を含む様々な遺伝子の
発現を調節し,クロマチン修飾にも関与する癌遺伝子である.このため,HMGA2 はシグナル伝達および遺伝子修飾の両者に関連しうる.出典:池田和彦「骨髄増殖性腫瘍の分子病態―High mobility group AT-hook 2(HMGA2)の役割―」
Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, Vol. 58. No. 3 58(3):441―447, 2012
HMGA2-Igf2bp2に関して最も有名な文献の1つこれ↓
Li Z, Gilbert JA, Zhang Y, Zhang M, Qiu Q, Ramanujan K, Shavlakadze T, Eash JK, Scaramozza A, Goddeeris MM, Kirsch DG, Campbell KP, Brack AS, Glass DJ.
An HMGA2-IGF2BP2 axis regulates myoblast proliferation and myogenesis.
Dev Cell. 2012 Dec 11;23(6):1176-88.
HMGA2は high-mobility-group(HMG)たんぱくファミリーに属する転写調節因子であり、IGF2BP2を介して正常な筋芽細胞の発達に寄与すると筆者らは報告している。HMGA2をKOすると、RNA-binding proteinであるIGF2BP2の機能が低下し、正常に筋芽細胞が発達しなくなり、筋肉の形成が正しく起きないと指摘している。
(HMGA2は胚発生時に様々な未分化細胞で高度に発現しているが、ほとんどの生体組織では発現していない。腫瘍細胞でアップレギュレートされていることが多い。さらに神経幹細胞などの成体幹細胞や前駆細胞の維持に重要な役割を果たしている可能性も指摘されている。)
上記文献に、Hmga2とStem cell agingについて述べた文献が引用されている↓
Nishino J, Kim I, Chada K, Morrison SJ.
Hmga2 promotes neural stem cell self-renewal in young but not old mice by reducing p16Ink4a and p19Arf Expression.
Cell. 2008 Oct 17;135(2):227-39.
同文献によると…
- Hmga2発現は幹細胞の加齢に伴い低下する。
- Hmga2は胎児および成体の神経幹細胞の自己再生を促進する。しかし高齢マウスでは自己複製に必要ではなくなる。
- Hmga2が欠損すると中枢神経・末梢神経の障害が起こる。