抄読会で扱った文献の紹介です。
オートファジーについては以前にも記事を書きました。
今回は上記のさらに発展した内容です。
まずオートファジーについておさらいです。
オートファジーAutophagyとは
古くなったタンパク質などを細胞自身が必要に応じて分解し、新しいタンパク質合成などに役立てる。
→これによって細胞機能を維持する機構のこと。
先述のブログの通りオートファジーには3種類あります。
マクロオートファジー(Macroautophagy)
メインのオートファジーとされています。細胞質成分やオルガネラを包み込んだオートファゴソーム(autophagosome)と呼ばれる小胞が、リソソーム(lysosome)と融合してオートリソソーム(autolysosome)を形成し、包み込んだ内容物を分解します。
マイクロオートファジー(Microautophagy)
リソソーム膜が陥入して直接細胞質成分を取り込み、その内部で分解します。オルガネラ量の調節、膜の恒常性維持、窒素不足の状態での細胞の生存に重要であると考えられています(Li et al., 2012)。
シャペロン介在性オートファジー(CMA)
細胞質内のタンパク質とシャペロン・タンパク質との複合体をリソソーム膜上の受容体 LAMP-2A(lysosomal-associated membrane protein 2A)が認識してリソソーム内に直接取り込み、高次構造を解いて分解します。
オートファジーというとだいたい上の3つの中のマクロオートファジーのことを指すのですが、今回はシャペロン介在性オートファジー(CMA)に注目してみます。先月のNatureの文献です。LAMP-2Aが次に紹介する文献でもキーポイントになります。
Dong S, et al.
Chaperone-mediated autophagy sustains haematopoietic stem-cell function.
Nature. 2021 Jan 13.
- 若いマウスではCMAが活性化されているが高齢マウスではあまり活性されていない。
- 若いマウスのCMA活性化は5FU投与でより活発になる。→通常、HSCの大半は休止期にあるが、5FU投与によってこれがActiveになる。HSCがActiveになるとCMAはより活性化される。
- また活性化されたHSCが枯渇するのを防ぐ効果もCMAにはある。
- LAMP2AをKO(ノックアウト)したマウスでは移植後生着能が低い。
→CMAはfunctional stem-cell維持(self-renewalの維持)に重要! - KOマウスでは…
・G0基の細胞多い(=細胞周期回らず)
・ATP産生低下
・ROS蓄積多い
・解糖系や死亡体shが抑制される
→これらによりタンパク質恒常性が損なわれる→HSC機能低下につながる
(これらの反応はHSC特異的。他の前駆細胞などでは見られず。) - 高齢マウスでLAMP2Aを強制発現させるモデルを作るとこれらの影響は解消される。(ただし若齢マウスに過剰発現させても特に恩恵はなし)
- 経口でCMA activotor投与してもこれらの影響を打ち消せる。
- まとめ
高齢マウスではCMAが徐々に低下。これにともなって解糖系抑制、脂質代謝抑制などが起こり、ROS蓄積や細胞周期遅延、DNA損傷などにつながり、タンパク質品質が維持できなくなり、HSC機能低下につながる。しかし補充によってこれを打ち消せるかもしれない。