Fang J, et al.
TRAF6 Mediates Basal Activation of NF-κB Necessary for Hematopoietic Stem Cell Homeostasis.
Cell Rep. 2018 Jan 30;22(5):1250-1262.
文献に出てくる因子の簡単な紹介
★NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー、核内因子κB、nuclear factor-kappa B)
転写因子として働くタンパク質複合体。急性炎症、慢性炎症、アポトーシスなど多くの生理現象に関与している。普段は細胞質に存在しているが、感染などで樹状細胞が活性化されると核内に移動し、炎症性サイトカインなどの炎症反応に必要なさまざまな遺伝子を活性化させ炎症反応を誘導する。炎症反応の開始と進行に非常に重要な役割を果たすが、一方で過剰に活性化してしまうとアレルギー疾患や炎症疾患、自己免疫疾患の発症につながってしまうことが分かっている。また、NF-κBのアポトーシスを防ぐ作用や炎症を促進する作用が発がんにも関与することが分かっており、様々なタイプのがんがNF-κBを恒常的に発現していることが報告されている。
参考文献:
炎症と消化器発癌 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/8/100_2269/_pdf
炎症反応を制御する新たな分子を発見
-過剰な炎症反応が起きないようにする仕組みの一端を解明-
https://www.riken.jp/press/2015/20151218_3/index.html
★TRAF6 (TNF receptor-associated factor 6)
シグナル伝達因子であり、ユビキチンリガーゼ活性(E3活性)を有するアダプター分子である。NF-κBシグナル伝達経路において重要な役割を果たす。NF-κBと同様に様々な生理機能に関与しており、骨代謝、免疫・炎症反応、胸腺構築、リンパ節や汗腺などの器官形成に関わると報告されている。
参考文献:
シグナル伝達因子TRAF6による骨代謝及び免疫・炎症反応の制御機構の解明
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/events/gakuyukai/archive_post_291.html
本文の要旨は以下の通り。
- 造血幹細胞(HSC)の恒常性維持のためにNF-κBの活性化が重要であることが報告されているが、どのように関与しているかは明らかでない。
→NF-κBシグナル伝達経路において重要な役割を果たすTRAF6に今回注目し、この役割を調査。 - Traf6を欠損させるとHSCの自己複製能が低下し、適応免疫や自然免疫シグナル伝達経路に変化が生じる。マウスの早期死亡や造血不全も明らかとなった。
- Traf6の欠損により、HSC静止状態が失われ、HSCプールの早期枯渇につながる。
- 上記の反応はTRAF6活性化とNF-κBの活性化を仲介するIKKβが機能しなくなることによって生じる。
- 以上より、TRAF6は造血幹細胞の恒常性維持に重要である。
上記分家により引用