本日は先月のStem cell reportsに掲載された造血幹細胞に関する文献です。
Abstractのみですが、、、
Stem Cell Reports. 2020 May 12;14(5):956-971.
Transcriptome Dynamics of Hematopoietic Stem Cell Formation Revealed Using a Combinatorial Runx1 and Ly6a Reporter System
Michael J Chen et al.
造血幹細胞(HSC)がその前段階である血管内皮細胞(hemogenic endothelial cells (HECs))から発生する過程に関する研究は、これらの細胞が希少であり、同じ表現型を有する細胞があることなどから困難である。我々は、Tg(Runx1-mKO2; Ly6a-GFP) dual reporter mouseを開発し、造血のコミットメントを可視化し、HSC前代回の細胞の発生と成熟を研究することを試みた。Runx1-mKO2においては、全ての動脈内の血管内皮細胞と造血クラスター細胞を標識可能であり、この中には、HSC前駆細胞、骨髄・リンパ球系前駆細胞、HSC自体も含まれている。
(補足:Runx1+23 enhancerは全ての血管内皮細胞と造血細胞で陽性となり、Ly6a (Sca-1) gene promoterはHCS前駆細胞=pre-HSC-producing HECsで陽性となる。Ly6a-GFPは非造血細胞でも陽性となるため、筆者らはこれらを組み合わせたツールを開発した。Runx1+23 enhancer regulated mKO2 reporter (Runx1-mKO2) with a Ly6a-GFP reporterを使うと、血管内皮細胞と造血クラスター細胞、そしてその後の分化細胞であるHSC前駆細胞(pre-HSC)や造血前駆細胞(=HPC)を標識することができる。
Erythro-myeloid HPCsがRunx1-mKO2陽性細胞群の中で主にみられるのに対して、機能的HSCとリンパ球前駆細胞のほとんどは上記の2種どちらも陽性の細胞群の中で見つかった。HSC活性は胎盤内のDP細胞で最初に検出された。これは、胎児肝臓段階の前にHSC(HSC前駆細胞含む)の増殖と成熟が起こるためにニッチが重要であることを反映している。単一細胞RNAシークエンスによるタイムコース分析により、HSC前駆細胞が胎児肝ステージHSCへと成熟するにつれてインターフェロン曝露の徴候を示していることが明らかになった。これらはまた、他系統分化遺伝子発現の徴候を示し、生体静止期HSCと関連して細胞周期を延長させることも明らかにした。