レポート作成のために調べた内容まとめです。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用と考えられる免疫関連有害事象(immune-related adverse events)のうち、肺障害(間質性肺炎)の画像所見の特徴
免疫関連有害事象としての肺障害の画像的特徴に関して、まず本邦からの文献をいくつか引用する。宮脇英里子らは、器質化肺炎パターンを呈する症例が43〜65%と多いながら、従来の薬剤性肺障害とは異なる画像所見を認める場合もある、と報告している。1 内野順治らは、「一般的に非区域性の陰影分布で両側びまん性または広範囲な浸潤影ないしスリガラス陰影が多い」としており、特発性基質化肺炎(COP)パターンが65%と最多であり、非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンが15%、過敏性肺臓炎(HP)パターンと急性間質性肺炎/急性呼吸窮迫症候群(AIP/ARDS)パターンがそれぞれ10%であったと報告しており、多彩な画像所見を呈し得ることが分かる。
次に海外の文献に目を向けてみる。Naingら3は、コンソリデーションやすりガラス影、斑状影などが辺縁部分に見られるのが特徴的であるとしており、また孤立性あるいは複数個所に及ぶ浸潤影や間質性陰影なども見られると示している。内野らと同じく、COP、NSIP、HP、びまん性肺胞損傷(DAD)の4つのパターンでその像は現れるとしており、中でもやはりCOPは最も一般的にみられる所見であるとしている。亜急性に発症する微熱、倦怠感、咳嗽とともに胸膜下優位のコンソリデーションやすりガラス影が主に見られるとしている。COPの特徴的画像所見の1つであるreversed halo signも見られうるが特異的所見ではないとしている。同じく免疫関連肺障害として発症頻度が高いNSIPにおいては、すりガラス影や網状影の他、牽引性気管支拡張症が見られ、また胸膜直下はspareされるという点がOPとの区別に役立つとしている。他の文献を参照してみても、やはり画像所見としてはCOPパターンが最多であり4,5、この点は留意すべきと考えられるが、AIP / ARDSパターンにおいて重症度が高いとの報告もあり、これも臨床的には重要な点である。4 上記のような頻度の高い画像所見を念頭に置きつつ、臨床経過や症状等を参考にして診断を下すことが重要と考える。
1. 宮脇英里子ら. 「免疫チェックポイント阻害薬の肺障害」. 「癌と化学療法」 . 2018; 45(7). 1021 – 1026.
2. 内野順治ら. 「免疫チェックポイント阻害剤の効果と副作用」. 2017; 126(6). 417 – 425.
3. Naing A, et al. Immune-Related Adverse Events: Pneumonitis. Immunotherapy. 2020; 1244: 255–269.
4. Nishino M, et al. Clin Cancer Res. PD-1 inhibitor-related pneumonitis in advanced cancer patients: Radiographic patterns and clinical course. 2016 Dec 15; 22(24): 6051–6060.
5. Antoniou KM et al. Interstitial lung disease. Eur Respir Rev. 2014;23(131):40–54.