こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】Notchを介したヒト臍帯血前駆細胞培養で移植後早期生着が可能に

急に暑くなってきて夏みたいですね…

 

本日も文献紹介なんですが、今回はAbstractのみです。。。

 

2010 Feb;16(2):232-6.
Notch-mediated Expansion of Human Cord Blood Progenitor Cells Capable of Rapid Myeloid Reconstitution
Colleen Delaney, Shelly Heimfeld, Carolyn Brashem-Stein, Howard Voorhies, Ronald L Manger, Irwin D Bernstein

 

Abstract

臍帯血移植後の骨髄生着の遅れは、不十分な数の前駆細胞を移植することによって生じるとされ、これは移植関連障害の発生率や死亡率増加につながってしまう。新た培養戦略を用いることによって、臍帯血前駆細胞を増やし臍帯血移植後の速やかな生着が可能となれば、この移植技術をより広く利用できることになるだろう。今回我々は、Notchを介したヒトCD34+臍帯血前駆細胞体外増殖システムを用い、幹細胞数と前駆細胞数を著しく増殖させる方法について報告する。これは、非肥満糖尿病-重症複合免疫不全マウス(=NOD-SCIDマウス)でも骨髄再構築能を発揮できる。さらにこのNotchシステムを用いて体外増殖した臍帯血前駆細胞を、骨髄破壊全治処置後に移植を行うと好中球生着までの時間が大幅に短縮された。我々の知る限り、これはヒトにおいて体外増殖した幹細胞・前駆細胞が早期生着した初めての例である。

 

※補足

NOD-SCIDマウスはT細胞やB細胞が存在しないことから、重度の免疫不全を呈するが、その反面異種細胞や異種組織の移植に対する拒絶が少ない。このことから、それまでの免疫不全マウスよりヒト細胞の生着に優れており、ヒト胎児の肝臓と胸腺を用いずとも、ヒトの造血細胞がある程度生着することが可能。このNOD-SCIDマウスを使って造血幹細胞や白血病細胞の研究が大いに進んだ。

出典:Wikipedia, 実験医学HPより