前回の文献紹介記事の続きです。
なかなかボリュームが多いので、長くなりそうです。。。
前回の記事はこちら↓
【文献紹介】Tリンパ球の適応と免疫における恒常性~その1~ - こりんの基礎医学研究日記
【文献紹介】Tリンパ球の適応と免疫における恒常性~その2~ - こりんの基礎医学研究日記
J Leukoc Biol. 2005 Sep;78(3):575-84.
T Cell Homeostasis in Tolerance and Immunity
Annette M Marleau, Nora Sarvetnick
ACCESS TO SELF‐ANTIGEN/MHC COMPLEXES AND CYTOKINES REGULATES T CELL REPERTOIRE DIVERSITY
・T細胞がどのように「(T細胞がない)空間」を認識するか、つまりどのようなシグナルを介してT細胞の代償的増殖が起こるのかに関しては主に2つの考え方がある。
1.恒常性センサーとしてT細胞間相互作用…周囲にT細胞が多くいれば代償的増殖は起こらない。
2.サイトカインやMHCタンパク複合体といった刺激性リガンドへのアクセス
・代償的増殖の中で特に重要とされているのは、自己抗原/MHC複合体である。
・リンパ球減少宿主においてナイーブT細胞が増殖するには、自己抗原/MHCとTCR(T
細胞受容体)との相互作用が必要である。
・T細胞が減少するような状態で代償的増殖が起こるとき、刺激性自己抗原が起こる結果として自己反応性T細胞クローンが過剰増殖するのではないかという説が支持されている。
・リンパ球減少が自己免疫誘導に理想的な環境を形成することは多くの実験でわかっている。
・自己抗原特異的T細胞が自己免疫を活性化するという反応は、免疫正常者においては起きず免疫不全RAG2-/-レシピエントにおいてのみ起きる。
・T細胞競合が代償的増殖を制限しているということは炎症性腸疾患モデルを用いた過去の実験で証明されている。
・T細胞欠損RAG-1 -/-マウスは、ナイーブCD45RBhi CD4+T細胞の導入によって消化管の異常(変性など)をきたす。
・面白いことに特異性に関係なく多量のTCRトランスジェニックT細胞を同時に導入すると発症しない。
・TCRトランスジェニックT細胞による疾患発症抑制は、in vivoにおける代償的増殖傾向の増大と表面抗原であるCD5発現亢進と直接的に相関している。
・CD5発現レベルと末梢T細胞の代償的増殖とには正の相関あり。
・T細胞欠損RAG-1 -/-マウスにCD5高発現細胞を導入すると…CD5低発現細胞を入れたときと比較して疾患の発症が大幅に遅くなる。→リンパ球減少宿主において代償的増殖によって生じたT細胞は病原性T細胞に対抗できる。
・タンパクMHC複合体の量も代償的増殖速度に関与している。
・また、TCRトランスジェニックT細胞とタンパクMHC複合体との親和性も重要。自己リガンドに対する親和性が高いと代償的増殖につながる。
・リンパ球減少宿主おいてT細胞が増殖するが、これは、胸腺における「正の選択」に関与するのと同じペプチドによって誘発される。
・末梢T細胞の維持は自己ペプチド/MHCに依存している。
・興味深いことにこれら自己ペプチドと自己MHCは自己免疫に影響をもたらす。
・リンパ球減少時、T細胞はペプチドMHCリガンドへのアクセスを増加させる。抗原提示細胞と接触する時間を長くする。(もしここで自己ペプチドを認識するとT細胞の代償的増殖につながる)
・抗原提示細胞の中でも樹状細胞DCは自己ペプチドを提示する候補である。樹状細胞は定常状態でT細胞と物理的クラスターを形成する唯一の抗原提示細胞。
・このほか、IL-2ファミリーがT細胞の恒常性には不可欠。
・IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21のサイトカイン受容体γc成分はT細胞恒常性に重要。
・IL-7はT細胞恒常性を維持するための必須サイトカイン。CD4+, CD8+ナイーブT細胞の重要な生存因子。単独でなく他のサイトカインと協調して作用する。