本日も造血幹細胞関連の文献紹介です。
本日はAbstractとIntroduction、次週ResultとDiscussionの予定です。
※ページ最後に続きの記事へのリンクあります。
Critical Role of Jak2 in the Maintenance and Function of Adult Hematopoietic Stem Cells
Abstract
Janus kinaseファミリーの1つであり非受容体タンパク質チロシンキナーゼであるJak2は、さまざまなサイトカインによって活性化され、細胞の生存・増殖に効果的な役割を果たす。活性化 JAK2V617F変異は、骨髄増殖性疾患の多くの患者で発見されているが、Jak2阻害薬で治療された患者はしばしば強い造血毒性を呈する。しかしながら、成人造血幹細胞(HSC)におけるJak2の役割は未だ明らかになっていない。我々は条件付きJak2ノックアウト対立遺伝子を用い、Jak2欠損はHSCと前駆細胞の急速な喪失につながり、骨髄不全を招き、成体マウスを早期死亡に至らせることを突き止めた。Jak2欠損はHSC機能の明らかな減退を招き、変異HSCは、移植後再増殖に重体な問題を来たすことが分かった。Jak2欠損はまた、HSCが豊富なLSK (Lin−Sca‐1+c‐Kit+)細胞のアポトーシス誘発や休止期喪失にもつながることが証明された。Jak2欠損LSK細胞は、活性酸素の上昇とp38 MAPK活性化上昇が見られている。変異LSK細胞ではまた、幹細胞因子やトロンボポエチンに応じたStat5, Erk,やAktの活性化が見られないこともわかった。遺伝子発現解析の結果、Jak2欠損LSK細胞では、HSC休止期や自己複製に関与する遺伝子がダウンレギュレーションされていることが分かった。これらのデータは、Jak2が成人HSCの機能維持において重要な役割を果たしていることを示唆している。
Introduction
・HSCは自己複製能と多分化能を有し、造血に不可欠な役割を果たしている。
・HSCの大半は、その枯渇を防ぐために静止期にある。
・Jak2は…種々の成長因子やサイトカインに応答して活性化される遍在的に発現している非受容体タンパク質チロシンキナーゼである。
・生殖細胞においてJak2が欠損すると、胎児肝赤血球生成障害の原因となる。
・成体マウスにおいては、貧血や血小板減少につながる。しかしJak2がHSC機能を調節するメカニズムは不明のままである。
・活性化JAK2V617F変異は、骨髄増殖性疾患の多くに見つかる。
・これらの治療のためにJak2阻害薬が開発されたが、これを使用した患者には造血障害が起こってしまう→成人HSC /前駆細胞におけるJak2の役割を理解することは非常に重要かつ臨床的意義がある。
・Jak2をマウスにおいて欠損させると…
静止期HSCがなくなる
アポトーシス増加
HSC機能欠損
→上記の結果…マウスが早期に死亡
につながることが分かった。
・HSCの自己複製にも重要な役割果たす。
・HSC内のシグナル伝達も阻害する。
******シリーズの全て******
その1