今回は、PCRの際に使用しているDNAポリメラーゼについてです。
いろんなメーカーからたくさんのDNAポリメラーゼが出ており、どのようなときにどれを使えばいいのかよくわからないので、少し調べてみました。
1.DNAポリメラーゼを選ぶときのポイント
私が調べてみた範囲では、「PCRに使う鋳型の長さ(短いor長い)」「その後の実験にPCR産物を利用するか」「ホットスタートかどうか」などが主なポイントのようです。
+αで「GCリッチかどうか」も関与してくるようです。
※AT結合が2つの水素結合でつながっているのに対し、GC結合が3つの水素結合でつながっており、この分GC含量が高いDNAは安定と言えるが、逆にDNAの2本鎖が外れにくく、PCRなどの際に配慮が必要。
Biocompareの"Bench Tips:
Choosing the Right DNA Polymerase for PCR"というページには、以下のような点に注意してDNAポリメラーゼを選ぶようにとしています。
- Thermal stability: 熱安定性(熱耐性)
- Extension rate: 伸長速度
- Fidelity: 精度
- Processivity: 処理力
参考サイトはこちら↓
Choosing the Right DNA Polymerase for PCR | Biocompare Bench Tips
開発が進み、熱耐性などはどのメーカーも十分あり、ホットスタートかどうかなどが実際のポリメラーゼ選択には関与してくるようです。一番最初に挙げたポイントをもう一度振り返ってみます。
以下の解説はNEBの解説動画を参考に作っています。(なので、例として挙げている商品もNEBのものになります。)
解説動画は「DNAポリメラーゼ選択に役立ちそうなサイトなど」の項目に載せてあります。
1-1.PCR産物をその後の実験に使う?
その後の実験、例えばシークエンシングに使う、等の場合は、よりPCRの精度を上げる必要があり、"High Fidelity"とされている酵素を使うことが勧められます。
逆に、例えばプラスミド内に目的にDNAが組み込まれているかどうかを確認するだけのPCRやコロニーPCRのときはそこまでの精度は必要なく"Standard PCR"で良いわけです。
動画内では、
"High Fidelity"のとき…Q5
"Standard"のとき...One Taq DNA polymerase
をお勧めしています。
1-2.ホットスタートかどうか?
ホットスタートPCRはより特異性の高いPCR産物を得るための方法です。
PCRを開始すると、まずPCR装置(サーマルサイクラ―)は温度が95℃ほどに上昇し(PCRの第1段階である熱変性がこの温度で起こる)、そこからPCRが始まるわけですが、この95℃に上がるまでの途中の過程で(あるいはPCR反応液の調製中に室温で)プライマーがテンプレートDNAに結合して非特異的な増幅が起きたり、プライマー同士が結合してしまうことがあります。これを防ぐのがホットスタート法です。
反応温度が高温(60℃以上)になってから反応必須成分を主導でくわえるという方法もあるようですが、これは面倒なので、室温など低温では活性化しないDNAポリメラーゼを使うという方法があります。
例えば、Hot-Start Gene Taqというホットスタート用のDNAポリメラーゼは、ニッポンジーン公式ページによると「PCR サイクルに入る前に95°C、5 分間の熱処理によって酵素の活性化処理を行う」とのことです。
1-3.特殊な検体を使うとき
例えば、非常に長いDNAを鋳型として用いる場合や血液などから直接PCRを行うときなどは特別な配慮が必要なようです。ここは専門性が高そうなので、割愛します。
2.DNAポリメラーゼ選択に役立ちそうなサイトなど
今回参考にしたサイト等です。
NEBは、PCR用のポリメラーゼをどのように選ぶか参考にするための"PCR selector"というサイトを開設しています。
質問に答えていくと、どのポリメラーゼが適当かsuggestしてくれます。
また、NEBは解説動画もありまして、例えば今回は以下の動画を参考にしました。
以下の動画はポリメラーゼ選びの概説のような内容ですが、他にも「(DNAポリメラーゼの1つである)Q5を選択するメリット」などといった個別の動画もあります。
今回は以上です。