本日受けたセミナーの内容まとめです。
主に自分用の備忘録です。
造血器腫瘍
・罹患者は約年間5万人程度。
・造血器腫瘍は、がん全体のおよそ3-4%を占める。
・生涯罹患率は悪性リンパ腫で1%、白血病で0.5-0.7%程度。
・悪性リンパ腫の罹患数は膵がんと同程度。
・固形がんは「手術」があるが、造血器腫瘍にはなし。ほぼ薬物(抗癌剤)のみで治療。
・白血病は、急性or慢性、骨髄性orリンパ球性の4パターンあり。
・慢性リンパ性白血病は「悪性リンパ腫」に厳密には含まれる。成熟したリンパ球の腫瘍(成熟していない=未分化なリンパ球の腫瘍は白血病)。
・リンパ球はさらに成熟すると一部は形質細胞に→これが癌化すると多発性骨髄腫。
・血液分化の最上流にいるのが造血幹細胞(HSC)。→これが一段階分化すると骨髄系前駆細胞とリンパ球系前駆細胞に分かれる。
白血病
・疫学:AMLは高齢者に多いがALLは小児と高齢者の二峰性。
・急性白血病とは…造血前駆細胞の悪性化!!(造血幹細胞でも分化した細胞でもない)
急性骨髄性白血病 AML
・白血病で症状が出るとき≒診断されるときにはだいたい体内に10^12個の腫瘍細胞がいる→1個の細胞が10μmとすると10㎝四方の立方体分の腫瘍細胞がいることになる。
・白血病の最初の治療=寛解導入療法を行って「完全寛解」をまず目指す。完全寛解は非常に重要!寛解なくして完治なし!
(完全寛解時、腫瘍量は10^9個に減少=1000分の1程度)
・その後も地固め療法、維持療法を継続して腫瘍細胞が0個にすることを目指す。
・これで完治する人は20-30%程度。
・これがうまくいかない人は…?→造血幹細胞移植!
・しかし再発してから移植するより寛解時点で移植する方が成績がよい。
再発しそうな人が先に分かれば…(後述)
造血幹細胞移植について
・同種造血幹細胞移植(他人の骨髄を使用)
・腫瘍細胞を死滅させる2つの仕組み
①前処置によって
②移植後の同種免疫によって
…ドナー細胞がレシピエントの腫瘍細胞を攻撃する。
・しかし移植後GVHDにて亡くなる患者さんも再発によって亡くなる患者さんも同じくらいいる。
・ではどのように移植が必要な患者を選ぶ?
→染色体異常!予後不良群を選別できる。
・染色体異常の例:Runx1/AML1遺伝子
正常なRubx1の機能を阻害してしまい白血病発症に寄与する。
・染色体異常の例:PML-RARα
・APL(出血傾向が強い)を引き起こす。
・転写因子であるRARαとPMLと融合してしまうことで正常な分化誘導ができなくなてしまう。
・もともとRARαはレチノイン酸が来ることによってリガンド的に機能し、分化誘導に寄与する。
・PMLと融合体を形成しても大量のレチノイン酸(オールトランス型)を使用することで正常な機能を惹起できる。
・上記からもわかるように、「転写因子」が造血細胞の分化や造血器腫瘍の発症に深く関与している。
・染色体検査では分からないような「1遺伝子異常」も予後に関与することが、近年のゲノム解析技術の進歩で分かるようになってきた。
・例:FLT3-ITD変異
・FLT3はリガンド型チロシンキナーゼの1つ。
・膜近傍領域に特定のアミノ酸が繰り返されるような配列が見られることがある=これがITDと言われる。
・ITDが入ってしまうと、チロシンキナーゼが無為に活性化してしまう(リガンドがきていないのに)
・その他にもいろいろ…
DNMT3A:メチル化によって白血病発症
TET2:脱メチル化によって白血病発症
メチル化はしなくてもされすぎてもダメ!
急性リンパ球性白血病 ALL
・AMLと同じく染色体異常によって予後の予測が立てられる。
・特にBCR-ABLが重要!
慢性骨髄性白血病 CML
・「とがった病気」AMLは様々な遺伝子異常や染色体異常のもとに起きていたが、CMLにおける異常は1つだけ…BCR-ABL
・放っておくとほぼ全例が急性化へ。
・ABL…チロシンキナーゼが原因
・チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブが有効(ATPがABLに結合できなくなることによって薬効を発揮する)
・IRIS study:それまで最良の治療とされていたIFN+AraCとImatinibを比較
→Imatinibで有意に治療成績よい。(クロスオーバーを許可した研究であり、許可していなければもっと差がついていたであろうとされちる)
それまでCMLに対してはしばしば移植が行われていたが、これ以降お粉れなくなった。Imatinibの臨床試験時のコード番号STIから"Stop Transplantation Immediatly"などと表現された。
・CMLで染色体異常が見つかったことや分子標的薬が使われるようになったことから、他の悪性腫瘍においても応用されるようになっていった。
・しかしNew generationのチロシンキナーゼも…
・その後CMLはより広い概念であるMPN:骨髄増殖性疾患の一部であるという概念が確立。分化能を保ったまま腫瘍細胞が増殖する。(CMLの他、PV, ET, IMFがこれに含まれる)
・JAK2変異がPVなど骨髄増殖性疾患ではしばしばみられる。
・JAK2が活性化されるとEPO感受性が上がり、PVを惹起。
悪性リンパ腫
・成熟したリンパ球の腫瘍。症例数は白血病より多く、治療成績は比較的高い。
・リンパ節腫脹がしばしば見られる。
・ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられ、非ホジキンリンパ腫の方が圧倒的に多い。
・治療は2パターン
①抗がん剤治療によって根治できる→進行が速いことが多い
②抗がん剤治療でも治癒は望めない→こちらは進行が遅く共存共生を目指す
・高悪性度=Agressiveと低悪性度=indolent
生存曲線は途中でcrossingするがこれが7-8年程度
・まず病理診断名の確定が重要!
・DLBCL:雑多な診断… ゲノム解析にて予後不良群を調べる
・抗CD20抗体であるRituximabの登場によりB細胞リンパ腫の治療成績は大きく改善。