こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【専門医レポート】脳梗塞に対するカテーテル治療

総合内科専門医レポートを書くに当たり、勉強した内容や調べた内容などのメモです。備忘録的な感じです。

 

脳梗塞に対するカテーテル治療

 

・急性期脳梗塞に対する血管内治療は、年々その重要度を増しており、2017年の脳卒中治療ガイドラインでは、内頸動脈または中大脳動脈M1閉塞(前方循環中枢側の閉塞)に対する治療として、発症6時間以内の血管内治療がそれまでのグレードBからグレードAへと格上げされた。(1)

・血管内治療の主なターゲットは、脳血流が不十分だが脳組織が不可逆的損傷を受けていない部位、つまり血流改善によって症状の改善が期待できる部位、いわゆるペナンブラと言われている部分となる。(1)

・これまで脳梗塞に対する血管内治療は十分な成果を上げることができていなかったが(2,3)、2015年以降、デバイスや治療技術の発展に伴い、次々と血管内治療の有効性を示す文献が報告され、急性期脳梗塞の重要な治療の1つとなりつつある。(4,5)

カテーテル治療による再開通率は約70%前後程度である。(2-5)

・tPA非適応例に対して、血管内治療は特に良い適応となりえ、今後も治療技術の向上を目指し積極的に血管内治療に取り組んでいくべきと考える。
・なお、現時点では日本のガイドライン(1)では血管内治療の適応を発症6時間以内としているが、今後はもっと拡大していくことが予想される。

・発症24時間以内の症例に血管内治療を実施し、血管内治療が有意に改善したとの報告(6)や、MRI画像をもとに患者を選別し16時間以内の血管内治療を行った症例で有意に神経学的予後が改善したとする報告(7)など海外では発症6時間以降の血管内治療の有効性を示す文献が次々と発表されている。今後の血管内治療のさらなる発展に注目したい。


1. 脳卒中治療ガイドライン(2017)
2. Ciccone A, et al. N Engl J Med. 2013; 368: 904-13.
3. Broderick JP et al. N Engl J Med. 2013; 368: 893-903.
4. Goyal M, et al. N Engl J Med 2015; 372: 1019-30.
5. Saver JL, et al. N Engl J Med 2015; 372: 2285-95.
6. Nogueira RG, et al. N Engl J Med. 2018;378(1):11–21.
7. Albers GW, et al. N Engl J Med. 2018;378(8):708–718.