実験のほうが忙しく、前回の更新から少し日数があいてしまいました。
本来ならば前回投稿した文献紹介の続きなんですが、別の記事をアップすることにしました。
MACSによる細胞分離の方法についてです。久しぶりの実験プロトコールです。
実験プロトコール記載の目的は、自分の頭の整理・知識の確認の他に、いわゆる「おばあちゃんの知恵袋」的な、文献や教科書に載っていないけど知ってるとちょっと役立つようなことを記録しておくことです。 正確性には注意を払っておりますが、利用の際はご注意ください。
Magnetic cell sorting (MACS)法とは?
磁石を用いて、細胞をセレクションする方法のことです。
たとえばいろんな細胞がたくさんいる中からAという細胞のみ取り出したいとします。
このとき、Aという細胞にのみ磁力を持ったビーズがくっつくようにします。
その後、磁力を持ったカラムを通すとAという細胞のみがカラムにくっつきます。
写真は下記から引用:
https://www.miltenyibiotec.com/US-en/products/macs-cell-separation/columns/ms-columns.html#gref
この部分(↓)に磁力があって、あらかじめ磁力を負荷しておいた細胞をひきつけるわけです。
これがいつも使用しているカラムです↓
これが磁力を付加するマイクロビーズです↓
では、プロトコールいってみます。今回は、私がよく行っている、「全骨髄細胞からAPC陽性細胞のみ分離する」というものを解説してみたいと思います。
- 全骨髄細胞をセルカウントし、anti-c-Kit-APC抗体を0.2μl/(10^7個細胞)添加し4℃で30分間おく。(遮光)
- 30分後、PBS10mlを加え遠心(Wash)
- 細胞を500μlのPBSで懸濁し、c-Kit抗体と同量のanti-APC-microbeadsを添加する。
これにより全骨髄細胞の中でAPC抗体がついている細胞(=APC陽性の細胞)にのみanti-APC-microbeads(=磁力あり)が結合する→APC陽性細胞にのみ磁力が付加される。
4℃ 15分 遮光 - 15分後、PBS10mlを加え遠心(Wash)
- カラムを上記の緑の台にセットする。爪がついているほうが前になるようにセットする。下から出てきた液を回収するための廃液用チューブをカラムの下にセットする(この廃液はAPC陰性細胞となる)。
- カラムにフィルターをのせ、フィルターの上からPBS3mlを流す(プレロード=カラムを最初に湿らせる)
- フィルターの上から、2mlPBSに懸濁した全骨髄液を入れる。
- 全部流れきったら、再度フィルターの上からPBS3mlを流す。これを3回繰り返す。
(合計PBS9mlを流す。)
PBS3ml→全骨髄2ml→PBS3ml→PBS3ml→PBS3ml - 上記を全部流し終わったら、カラムを緑の台からはずし、カラムだけ陽性細胞回収用チューブの上に乗せる。
- PBS5mlをカラムの上から入れ、カラムに付属しているプランジャーでそれを押し出す。これによってカラムにトラップされているAPC陽性細胞のみ取り出す。
写真は下記サイトから。プロトコールも参考にしてください。
このようにしてAPC陰性細胞とAPC陽性細胞を分けることができました。
今回は以上です。