こりんの基礎医学研究日記

都内の医大を2014年に卒業。現在は大学院で基礎研究中。日々の研究の中で疑問に思ったことや勉強したことなどを主に自分のための備忘録として書いていきいます。ときどき臨床の話や趣味の話も。必ずしも学術論文等が元となっていない内容もありますので、情報の二次利用の際はご注意ください。

【文献紹介】加齢に関連したマウス造血幹細胞の特徴~その1~

本日も文献紹介です。

 

. 2000 Nov 6; 192(9): 1273–1280.
PMCID: PMC2193349
 

Age-Associated Characteristics of Murine Hematopoietic Stem Cells

Kazuhiro SudoHideo EmaYohei Morita, and Hiromitsu Nakauchi

 

Abstract

造血幹細胞(HSC2)の加齢に関連した機能の変化についてはあまり知られていない。我々はC57BL/6マウスにおける骨髄中のCD34−/lowc-Kit+Sca-1+ lineage marker–negative (CD34KSL) 細胞を解析することでHSCの加齢について研究を行った。CD34- KSL細胞は週齢が増すにつれて徐々に増加が見られた。加齢によらず、これらの細胞は、stem cell factorとinterleukin (IL)-3によってin vitroでコロニー形成をするが、IL-3のみで形成しなかった。Day12コロニー(=day 12 colony-forming unit (CFU)-S)を形成せず、これは骨髄分化能を有する原始細胞であることを示唆している。in vivo限界希釈法によって、CD34- KSLの細胞の中で多系統増殖能を有する細胞が2ヵ月から18か月にかけて2倍になったことが分かった。さらに我々は、18か月マウスの34-KSL細胞の中から、HSCから分化する別の再増殖細胞集団を同定した。これらの集団はリンパ球系の分化能は少なく、しかし自己複製能は維持されていた。これは、2次移植によって明らかになった。我々はHSCは、加齢に伴ってリンパ球への分化能が低下し、代わりに自己複製を繰り返し行うようになるという仮定を提案する。

 

Introduction

・固体の老化は以下の2つによって定義される。

①年齢とともに死亡する可能性が増加する。

②時間経過に伴う表現型の特徴的な変化が見られる。

・HSCは全生存期間において、自己複製と全造血系統への分化が可能であるため、HSCが老化するのか疑問視されている。

・HSCの寿命の評価は連続移植によって行われる。

・最近の研究では、高齢HSCの若齢HSCと同様に、移植を繰り返しても再増殖能を発揮し、両者はクローンレベルでは区別でいなことを示している。

・いずれにせよ、HSCはドナーの寿命よりあるかに長く機能することが可能である。

・競合移植によって、高齢マウスの骨髄再増殖能が若齢マウスより高いことが示され、これは高齢HSCが量的・質的に変化している可能性を示している。

・HSCの頻度は高齢マウスで比較的高いことが数学的解析で示されているが、高齢になるにつれて再増殖活性が増殖するメカニズムは不明のままである。

・これらの事実は全て高齢マウスにおいて造血不全が起こることと相反する結果となっている。

・我々は、加齢によるHSC機能変化に重点を置き、今回の研究を行った。限界希釈法により、骨髄の他系統再増殖細胞数が、2か月から18か月にかけて2倍に増加した。

・我々は骨髄細胞中のCD34−/lowc-Kit+Sca-1+ lineage marker–negative (CD34KSL)集団にHSCが濃縮されていることを示し、これは加齢に応じ増加する様子が見られた。

・また、この中で分化能が骨髄系に偏った再増殖する別の細胞群が発見された。同細胞群は自己福江市も可能であった。

 

次回はResultsからになります。

 

記事まとめ

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【文献紹介】加齢に関連したマウス造血幹細胞の特徴~その1~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】加齢に関連したマウス造血幹細胞の特徴~その2~ - こりんの基礎医学研究日記

【文献紹介】加齢に関連したマウス造血幹細胞の特徴~その3~ - こりんの基礎医学研究日記

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