総合内科専門医レポートを書くに当たり、勉強した内容や調べた内容などのメモです。備忘録的な感じです。
★腎不全とPAD
・PAD=末梢動脈疾患
心臓・冠動脈以外に起こる閉塞性動脈疾患を指し、閉塞性動脈硬化症(ASO)と閉塞性血栓血管炎(TAO)が含まれるが、ASOと同義で用いられることも多い。
・確定診断にはその正確さと簡便性からABIがしばしば用いられ、感度・特異度共に90%以上である。
・HbA1cの1%増加につきPADのリスクが26%増加する。
(Slevin E. et al. :glycosylated hemoglobin and cardiovascular disease in diabetes mellitus. Ann. Intern. Med. 2003 ; 141 ; 421-431)
・透析患者は糖尿病の有無にかかわらずPADの独立した危険因子となる。
・冠動脈疾患は透析患者の PAD 発症を 2.85 倍高め,糖尿病透析患者は非糖尿病患者よりも 4.18 倍高い
(OʼHare AM, Johansen K:Lower-extremity peripheral arterial disease among patients with end-stage renal disease. J Am Soc Nephrol 12:2838-2847, 2001)
・PADの予後
・間欠性跛行
・5年間で70~80%は症状が変わらないか改善している。
・何らかのインターベンションが必要となる例は20~30%程度。
・切断に至るのは2~3%程度。
・間欠性跛行という症状をとっても予後は決して悪くないが、その死亡率は5年間で30%に及ぶ。
・分類
・治療…UpToDateに挙げられているものを示す。
- 薬物療法…シロスタゾール、サルボグレラート、ベラプロスト、チクロピジンなど
- 外科的治療…EVT、バイパス、下肢切断
- その他…運動療法、HBO、CD34幹細胞移植
※シロスタゾールは心不全の副作用があり、また頻脈の副作用もあり、透析患者では使用しづらい。(Jpn Journ. Clin. Dial. 2015:37:763-770)
★腎不全と大動脈弁狭窄症(AS)
・慢性透析患者は非透析患者と比較して非常に早い。
(Urena P. et al. Evolution aortic stenosis in hemodialysis patients : Nephrologie 20 : 217, 1999)
・ASの診断・及び重症度は弁口面積、大動脈弁圧較差、最高血流速度、EFなどで決定する。
・手術適応
(日本循環器学会 弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン 2012)
(日本透析医学会ガイドライン)
・症候性であれば適応となり無症候性の場合は決まった基準はない。
・透析患者に関しても当てはまる。
・慢性透析患者に対するAVRの遠隔成績はガイドライン等では示されておらず、大規模な研究も数少ないが、遠隔手術成績の一例を示す。
・1年生存率:74.5%
・3年生存率:42.1%
・5年生存率:29.9%
・10年生存率:6.8%
(S. Azuma et al. Long term results following Aortic Valve replacement for Aortic Valve Stenosis in Patients with Dialysis-Dependent Renal Failure and Risk Factor for Prognosis : Jpn. J. Cardiovasc. Surg. 42 : 274-278 (2013))
・比較のため、慢性透析に限らずAVRを施行した患者の遠隔成績データの1例を示す。
Ramdas G. Pai et al. Ann Thorac Surg 2006;82:2116-22
・TAVI
- 海外においては透析患者に対してTAVIが施行されているが本邦においては保険適応外である。
- 透析患者におけるTAVIの成績・合併症などの研究は十分でない。
- PubMedにて”TAVI” “Dialysis”での検索→25件